研究・教育の概要
被子植物のオスの細胞である花粉に着目し、オスとメスが出会い、子孫を残すしくみを研究しています。花粉の発生過程や細胞機能を明らかにすることで、いのちを次世代につなぐ「生命のデザイン」に迫ります。また、最先端の手法や異分野の知見を取り入れながら、「生殖を自在にデザイン」する植物生殖工学技術の開発にも取り組んでいます。
被子植物の子孫である種子は、私たちの生活に欠かせない資源です。しかし、気候変動や人口増加などにより、安定的かつ効率的な生産が課題となっています。そこで、顕微鏡イメージングと遺伝学を基盤に、不稔の原因や、少ない花粉で確実に種子を作るしくみを明らかにすることで、農業や環境分野に貢献することを目指しています。
また、自分の考えや成果をわかりやすくプレゼンテーションする「伝わるデザイン力」を磨くことにも力を入れています。広い視野で課題に取り組むことで、卒業後も多様な分野で活躍できる人材を育成します。
主な研究テーマ
花粉の発生と分化の制御機構の解明
花粉は1細胞が非対称分裂し、大きい栄養細胞と小さな雄原細胞に分化することで形成されます(図1)。しかし、様々なストレスで対称分裂すると、雄原細胞が作られず、受精できない花粉となってしまいます。私たちの研究室では、ライブイメージングに遺伝学的解析やオミクス解析を組み合わせることで、花粉の発生と分化の制御機構の解明に挑みます。これらの研究を通して、1つの細胞から性質の異なる2つの細胞が生み出されるしくみや、細胞が受精能を獲得する分子機構の理解を目指しています。
効率的な受精メカニズムの解明
シロイヌナズナの花粉はめしべに受粉すると、花粉管を発芽します。興味深いことに、どの胚珠(メス)も花粉管(オス)を1本ずつ誘引し、他の花粉管を拒否する「一対一」の誘引を示します(図2)。この現象は多精拒否と呼ばれ、少ない花粉でより多く種子を作るためのしくみです。多精拒否は様々な受容体や小分子ペプチドによって制御されており、これらの因子や細胞動態に着目することで、被子植物が進化の過程で獲得した効率的な子孫繁栄のしくみに迫ります。
花粉を用いた植物生殖工学技術の確立
花粉に一過的に遺伝子を導入することで、発生や受精に関わる遺伝子を迅速に調査することができます(図3)。また、顕微操作による1細胞回収や、近赤外レーザー光による1細胞破壊により、狙った花粉を解析し、回収して受粉することもできます。これらの技術を融合することで、花粉の発生を制御し、目的の植物をデザインする新しい植物生殖工学技術の確立を目指しています。
主な発表論文・著作
- Mizuta et al., Cytoskeleton, 0, 1-13, 2025
- Mizuta et al., EMBO Rep., 25, 2529-2549, 2024
- Kaneshiro et al., Quant. Plant Biol., 3, 1-10, 2022
- Niimi et al., J. Vis. Exp., 184, 2022
- Mizuta, Plant Cell Physiol., 62, 1224-1230, 2021
- Nagahara et al., Plant Reprod., 34, 191-205, 2021
- Mizuta and Higashiyama, J. Cell Sci., 131, jcs208447, 2018
- Mizuta et al., Protoplasma, 252, 1231-1240, 2015
- Mizuta et al., Plant J., 78, 516-526, 2014
- Mizuta et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 107, 20417-20422, 2010
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奈良先端科学技術大学院大学