NAIST 奈良先端科学技術大学院大学 バイオサイエンス領域

研究室・教員

バイオエンジニアリング (加藤晃研究室)

加藤晃教授の顔写真
教授
加藤 晃 mailアイコン
助教
若林 智美 mailアイコン
加藤 壮英 mailアイコン
研究室HP
https://bsw3.naist.jp/ko-kato/

研究・教育の概要

バイオテクノロジーによる社会貢献を念頭に、特に植物の遺伝子発現制御機構を理解し、バイオ医薬品などの有用タンパク質を植物で高生産するための基盤技術の開発や、表現型を制御する仕組みの解明を行っています(図1)。

研究室に配属された学生自身が研究を論理的に理解し、知識の裾野を広げ発展させていけるように指導を行っています。定期的な研究室ミーティングに加えて、産業界から研究者・実務者を招き、企業での研究開発に必要な知識を紹介します。これらの指導を通して、低成長・グローバル社会で幅広く活躍できる人材の育成を目指しています。

主な研究テーマ

導入遺伝子の高発現化技術の開発

植物を宿主とした、医療用ワクチンや成長因子などの有用タンパク質の生産は、ウィルスやプリオンの混入リスクの低さなどから非常に注目を集めています。一方で、生産性の低さが問題になることも多く、導入した遺伝子からタンパク質が生産されるまでの複数の過程を効率化することが求められています(図2)。そのためには、効率の決定に関わる配列の特徴を解明し、導入遺伝子の塩基配列を最適化することが必要不可欠です(図2)。そこで当研究室では、次世代シーケンサーや機械学習、最適化アルゴリズムを用いて、転写に関わるコアプロモーターの解析や、mRNAの安定性や翻訳効率に関わる5’UTR配列や3'UTR配列の解析などを精力的に行い、既存の効率を超える全く新しい配列を設計するシステムの開発を行っています。これまでに得られた成果は、複数の企業に提供し、既に一部の成果は実用化されました。

遺伝子発現による表現型制御機構と適応進化機構の解明

遺伝子発現はその個体の表現型に直結します。この研究では、特に開花時期などの植物の繁殖成功にとって重要な形質に焦点を当て、ゲノム配列情報や遺伝子発現データに基づいて、表現型を制御する遺伝的要因をゲノム網羅的に検出することを試みています(図3)。また、検出された遺伝子がどのように表現型に関連しているかを明らかにします。野生植物の繁殖成功度を制御する仕組みや適応進化機構の理解、さらには将来的には農業への応用を目指しています。

遺伝子発現による植物の環境適応機構の解明

この研究では、植物が環境ストレス状態に巧みに耐える能力と、環境変動に柔軟に適応する仕組みに着目します(図4)。環境適応性の異なる系統を利用し、ゲノム解析により責任遺伝子を探索します。高解像度の遺伝子発現解析により、環境変動に対する応答機構の解明を目指します。

図1
(図1) 植物バイオテクノロジー
図2
(図2) 導入遺伝子発現系の最適化
有用タンパク質を高生産させるためには、様々な過程を効率化する必要があります。網羅的解析や機械学習を用いて、効率の決定要因を解明することで、効率向上のために塩基配列を最適化することが可能となります。
図3
(図3) 塩基多型と表現型多型の関連解析
ゲノム配列情報から得られた系統間での塩基の違い(塩基多型)と、表現型の違い(表現型多型)を使って、注目する形質に関連するゲノム領域を推定します。
図4
(図4) 脱水ストレスを与えたゼニコケ葉状体
ソルビトール添加/非添加培地で3週間。培地の高い浸透圧のため、この系統では生育が抑制されます。

主な発表論文・著作

  1. Ueno D. et al., J. Biosci. Bioeng., 143, 450-461, 2022
  2. Ueno D. et al., Plant Sci., 318, 111241, 2022
  3. Han Q. et al., AoB Plants., 13, plab039, 2021
  4. Yagi N. et al., Nat. Commun., 12, 3684, 2021
  5. Ueno D. et al., BMC Bioinform., 22, 380, 2021
  6. Matsui T. et al., Plant Biotechnol., 38, 239-246, 2021
  7. Ueno D. et al., Plant Cell Physiol., 62, 143-155, 2021
  8. Shah N. et al., Nat. Commun., 11, 253, 2020
  9. Yamasaki S. et al., Plant Biotechnol., 35, 365-373, 2018
  10. Yamasaki S. et al., J. Biosci. Bioeng., 125, 124-130, 2018