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奈良先端科学技術大学院大学 バイオサイエンス領域

Research 研究

教員

遠藤教授 教授

遠藤 求

久保田助教 助教

久保田 茜

高橋助教 助教

高橋 望

研究室ホームページ

https://bsw3.naist.jp/endo/

全学オンラインセミナー

2022年度に開催されたBio Discovery Session(全学オンラインセミナー)のアーカイブ動画の一覧です。
Bio Discovery Session

Webメディア

NAIST Edge BIOは、奈良先端科学技術大学院大学 バイオサイエンス領域 の各研究室で取り組んでいる「最先端」の研究プロジェクトや研究成果について、研究者だけではなく受験生や一般の方にも分かりやすく紹介するためのWebメディアです。
NAIST Edge BIO 第9回, 第34回

研究・教育の概要

ほとんどの生物は自身の体の中に時間や季節を測る仕組みを持っており、それを使って周期的な環境変化を予測し、先回りして変動に備えています。

私たちの研究室では、約24時間のリズムを刻む概日時計(がいじつどけい)を中心に、植物が時間や季節を測る仕組みとその分子メカニズムの解明を目指しています。遺伝子発現や細胞伸長、花芽形成など、植物の多様な生理応答の根幹にある時間の謎に一緒に挑みませんか?さらに当研究室ではバイオインフォマティクス的な視点からの研究に取り組むことも可能です。生物学的な実験手法にとどまらず、大規模なデータ解析や新たな検出手法の開発を通じて、時計の原理に迫るアプローチも歓迎します。

当研究室での活動を通して、植物生理学の深い理解が得られるだけでなく、「何が問題であるかを見極め、それに対する適切な検証方法を設定する能力」という、研究者や社会人として一生の武器になる論理的思考力を身につけることができます。

主な研究テーマ

決まったタイミングで花が咲く仕組みの解明:1年から数十年スケールまで

季節性の花芽形成は概日時計によって制御されていますが、私たちは従来の実験室条件(温度一定、長波長を含まない)にとどまらず、温度変化や長波長を含む野外条件での解析という最先端のアプローチを取り入れています。野外環境下のモデル植物シロイヌナズナでは、花成ホルモンをコードするFT 遺伝子の発現が夕方だけでなく朝方にも明確なピークを持ち、花成のタイミングも早まることが明らかになりました(図1)。このこれまで見過ごされてきた朝のFT発現ピークと温度の影響に着目し、遺伝学や生化学、さらに生態学的な観点を融合させて未知の分子メカニズムに迫ります。

また、1日より長い周期の時間を測る仕組みの解明も独創的なテーマです。たとえば、67年周期で花を咲かせることが記録されているモウソウチク(日本に3系統存在)や、「時」をカウントする仕組みに変異が入ったと考えられる25年周期の系統を用い、次世代シーケンサーを用いた網羅的ゲノム解析や、エピジェネティックな修飾の変化、タケ培養細胞の解析から、植物が数十年という長期をどのように計測しているのか、その壮大なスケールの謎に挑みます(図2) 。

図1

(図1) 花成ホルモンをコードするFT 遺伝子の発現は実験室条件(温度一定、長波長無し)では夕方に一回のみである(上段)。しかし野外条件(温度変化、長波長含む)では朝・夕の二回の発現ピークが見られ、早咲きになる。

図2

(図2) 67年周期を示すことが記録されているモウソウチクは日本に3系統存在する。これらを使えば、植物が長期を計測する仕組みが明らかになると期待されている。

時間情報の長距離伝達の仕組みと意義

植物は神経や血管を持ちませんが、一つの個体として統合的に生育するためには、体の各部で測った時間を他の器官や組織と共有する必要があります 。私たちは、接ぎ木技術やホタルの発光システムを利用した高度なレポーター解析を駆使し、器官・組織レベルでの概日時計の特性を明らかにしてきました。地上部(茎頂)と根の間や、葉の維管束と葉肉の間で時間情報がどのようにやり取りされているのかを、スクロースなどの糖類や移動性の時計タンパク質ELF4、様々な栄養素に着目して解明を進めています(図3)。

さらに、植物の根に生える根毛の長さにも概日リズムが存在することを新たに発見しました 。この周期的な伸長には地上部から伝わるシグナルが重要であることがわかっており、その実態と未知の制御ネットワークの全貌解明を目指して接ぎ木や深層学習による自動定量なども駆使して長距離の時間情報伝達の意義と仕組みの解析を進めています(図4)。

図3

(図3) 植物概日時計の長距離コミュニケーション。葉の維管束と葉肉、地上部(茎頂)と根で時間情報のやりとりがある。また、スクロースや時計タンパク質ELF4が時間情報伝達物質として挙げられる。

図4

(図4) 植物の根に生える根毛は概日時計によって周期的な伸長が制御されている。地上部から何らかのシグナルが伝えられて根における根毛伸長が制御されているが、その実態はまだわかっていない。

バイオインフォマティクスによる振動遺伝子の網羅的解析

遺伝子発現の振動リズムは生命現象に周期性を生み出すための基盤ですが、植物でどの程度の遺伝子が振動しているのかについては未だ統一的な見解がありません。当研究室では、実験的アプローチだけでなく、バイオインフォマティクス的なアプローチからの解析も行っています。すでに、GEAR (Gene Expression Archive for Rhythms)と名付けた植物の遺伝子発現の時系列データベースを公開・運営し、世界中のリズム研究者に解析の基盤となるデータを提供しています。また、この大規模な時系列データを用いて、植物の振動遺伝子をより正確に検出する新たな計算手法の開発にも取り組んでいます。従来手法ではノイズに埋もれて見逃されていたリズム遺伝子を網羅的に見つけることで、その背後にある振動生成原理に迫ります。