NAIST 奈良先端科学技術大学院大学 バイオサイエンス領域

研究室・教員

植物免疫学 (西條研究室)

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教授
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助教
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研究室HP
https://bsw3.naist.jp/saijo/

研究・教育の概要

植物もヒトと同様に微生物の集団(マイクロバイオーム)を体内に宿し、共生関係を成立させながら、病原体の感染を防ぐことで身を守っています。抗原抗体反応に代表されるような獲得免疫を持たない植物が、どのようにして急速に進化し得る多様な微生物に対応しているのでしょうか? また、環境適応を助けてくれる共生菌を誘因・許容しながらどのようにして病原菌を防除しているのでしょうか?

植物は、微生物の構成成分(MAMPs)に加えて、自らの異常を示すダメージシグナル(DAMPs)を指標にして、病原体の侵入・感染を的確に感知しています。その仕組みが病原菌抵抗性に重要であると同時に共生菌の感染制御にも重要であることを私たちは示してきました。環境変化に応じて植物が免疫や共生を調節する仕組みの解明に向けて、①免疫受容体および環境因子センサーによる免疫シグナル制御、②共生菌―病原菌の感染戦略、さらに③共生マイクロバイオームの実態や役割等に関して、シロイヌナズナやイネなどを材料として研究を進めています。植物を「植物微生物共生体」と捉えることで植物や微生物に関する理解を深めること、また環境保全型農業技術の開発にも貢献することが目標です。

主な研究テーマ

  1. 植物が病原菌と非病原菌を識別するシグナルの実体や受容体の同定、対峙する病原菌の感染レベル・感染リスクに応じて免疫応答を調節する免疫シグナル制御機構の解明を進める。
  2. 植物が環境変動に応じて免疫システムや微生物共生を調節する仕組みを明らかにすることで、植物・微生物・環境因子の相互作用に関して分子生物学的な理解を深める。
  3. 植物と共生する内生菌(エンドファイト)や共生菌集団(マイクロバイオーム)の実態や役割、それを制御する仕組みを明らかにすることで、植物―微生物共生体の実体に迫るとともに応用展開を図る。
図1
(図1) 植物と微生物の関係性(共生か病害・防除かなど)は環境条件に大きく依存します。私たちは、植物の生存や作物生産を左右する、植物・微生物・環境因子の相互作用メカニズムについて解明に取り組んでいます。
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(図2) パターン認識受容体(PRR)は、微生物成分(MAMPs)やダメージシグナル (DAMPs)を認識すると一連の防御応答を誘導します。免疫シグナルの制御メカ ニズムや環境変動に応じて調節される仕組みについて解明を進めています。
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(図3) 植物は、組織内に侵入した微生物(内生糸状菌の一種を緑に光るGFPで標識し、菌糸を破線で囲んである)と細胞膜(赤)で接して相互作用を展開されます(矢印)。貧栄養条件では内生菌の感染によって植物の成長が促進されます。バー:10 µm。

主な発表論文・著作

  1. Okada et al, New Phytologist, 229, 2844-2858, 2021
  2. Saijo & Loo, New Phytologist, 225, 87-104, 2020 Tansley Review
  3. Saijo et al., Plant J., 93, 592-613, 2018
  4. Shinya et al., Plant J., 94, 4, 626-637, 2018
  5. Yasuda et al, Curr Opin Plant Biol, 38, 10-18, 2017
  6. Ariga et al, Nature Plants, 3, 17072, 2017
  7. Yamada et al, Science, 354, 1427-1430, 2016
  8. Espinas et al, Front. Plant Sci., 7, 1201, 2016
  9. Hiruma et al, Cell, 165, 464-474, 2016
  10. Yamada et al, EMBO J., 35, 46-61, 2016
  11. Ross et al., EMBO J., 33, 62-75, 2014
  12. Tintor et al., Proc Natl Acad Sci U S A, 110, 6211-6216, 2013
  13. Serrano et al., Plant Physiol., 158, 408-422, 2012
  14. Lu et al., Proc Natl Acad Sci USA, 106, 22522-22527, 2009
  15. Saijo et al., EMBO J., 28, 3439-3449, 2009