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奈良先端科学技術大学院大学 バイオサイエンス領域

Research 研究

教員

西條教授 教授

西條 雄介

安田助教 助教

安田 盛貴

井上特任助教 特任助教

井上 加奈子

John助教 助教

Dominguez John Jewish

研究室ホームページ

https://bsw3.naist.jp/saijo/

全学オンラインセミナー

2022年度に開催されたBio Discovery Session(全学オンラインセミナー)のアーカイブ動画の一覧です。
Bio Discovery Session

Webメディア

NAIST Edge BIOは、奈良先端科学技術大学院大学 バイオサイエンス領域 の各研究室で取り組んでいる「最先端」の研究プロジェクトや研究成果について、研究者だけではなく受験生や一般の方にも分かりやすく紹介するためのWebメディアです。
NAIST Edge BIO 第14回

研究・教育の概要

植物は、ヒトのように「獲得免疫」(異物=抗原に合わせて自分の遺伝子を組換えて抗体を作る仕組み)を持っていませんが、それでも病気から身を守る優れた免疫システムを備えています。さらに、ヒトと同じように、さまざまな微生物の集団(マイクロバイオーム)を体内に住まわせ、環境変化に応じて共生関係を調節することで生存に役立てています。では、どのようにして多くの共生菌を受け入れつつ病原菌の感染や増殖を防いでいるのでしょうか?

植物は、微生物が持つ特徴的な成分(MAMPs)や、自らの細胞がダメージを受けた時に出すシグナル(DAMPs)を手がかりにして、病原菌の侵入や増殖の兆しを正確に感知します。この仕組みは、病気を防ぐだけではなく、共生菌との関係を調整する上でも重要です。なぜなら、同じ菌でも環境によってふるまいが変わり、植物にとって有益にも有害にもなり得るからです。

私たちは、①環境の変化に応じて植物がどのように病原菌を感知し、免疫を調節するのか、②病原菌や共生菌がどのような戦略で植物に感染し、どのような影響を及ぼすのか、③植物と共生菌の間でどのようなコミュニケーションが行われ、共生が成立するのか、に関して研究しています。実際には、シロイヌナズナやイネなどの植物を用いています。植物を「植物+微生物の共生体」として考えることで、植物と微生物の関係性をより深く理解し、環境にやさしい農業技術を開発することも目指しています。

図1

(図1) 植物と微生物の関係性(共生するのか、病害を引き起こすのか)は、環境条件によって大きく変わります。私たちは、植物の生存や作物の生産に影響を与える、植物・微生物・環境の相互作用の仕組みを分子レベルで解明することに取り組んでいます。

図2

(図2) パターン認識受容体(PRR)は、微生物が持つ成分(MAMPs)や細胞ダメージによって生じるシグナル (DAMPs)を感知すると、防御応答を引き起こします。免疫受容体からのシグナルがどのように制御されているか、また環境の変化や菌の感染状況に応じてどのように調節されるのかを解明する研究を進めています。

主な研究テーマ

  1. 植物が病原菌と非病原菌を見分けるシグナルの実体やシグナルを検出する受容体を同定する。また、病原菌がどの程度感染しているか、どれくらいのリスクがあるのかに応じて、植物が免疫応答を調節する仕組みを明らかにする。
  2. 植物は、環境の変化に応じて免疫システムや共生する微生物との関係を調節している。この仕組みを解明することで、植物・微生物・環境の関係がどのように影響し合っているのか、分子レベルで理解を深めることを目指す。
  3. 植物と微生物や微生物集団(マイクロバイオーム)との共生の実態や役割を明らかにする。また、植物がどのように共生をコントロールしているのかを解明し、植物と微生物集団が一体となった「植物-微生物共生体」としての実像に迫るとともに、農業などへの応用も視野に入れる。
図3

(図3) 植物は、根の中に微生物を共生させることで、土壌から効率よく栄養を吸収しています。では、植物はどのようにして共生菌を引き寄せ、共生菌はどのように植物を見つけるのでしょうか? 私たちは、植物と共生菌がどのようにコミュニケーションを取り、共生関係を築くのかを研究しています。優良な無施肥水田でイネの共生菌を特定し(左)、根の内部で共生する様子(右上、電子顕微鏡写真)や共生を制御する仕組みを解明しています。さらに、共生菌を持続可能な農業に活用する取組みも進めています(右下)。