植物成長制御 (梅田研究室)

- 教授
- 梅田 正明
- 助教
- 安喜 史織、Zhang Ye
- { mumeda, aki, zhang.ye }@bs.naist.jp
- 研究室HP
- https://bsw3.naist.jp/umeda/
研究・教育の概要
植物は一生を通じて器官形成を続けます。これは、胚発生初期に器官形成を終える動物とは大きく異なる特徴です。私達は、植物が成長とともに器官サイズを大きくするメカニズム、環境ストレスに応答して細胞分裂を一時停止させるメカニズム、器官形成の元となる幹細胞を再生・維持するメカニズムを解明して、植物の持続的な成長を支える仕組みについて理解しようとしています。これらの研究は、変動する環境下で生育する植物の「生き様」を理解するだけでなく、食料やバイオマスの増産に繋がるような植物の成長改変技術を開発する上でも非常に重要です。
主な研究テーマ
DNA倍加の誘導機構
多くの植物は、細胞分裂を終えた後にDNA倍加(細胞周期の分裂期をスキップしてDNA複製のみを繰り返すサイクル)を起こし、器官サイズを大きくします。最近の私達の研究により、クロマチンの構造変化がDNA倍加の誘導に重要であることが明らかになりました(図1)。現在、その分子機構を明らかにするとともに、穀物・果実・樹木でDNA倍加を誘発し成長を促進することで、食料やバイオマスの増産をもたらす新規技術の開発を進めています。
環境ストレスに応答した細胞分裂の停止機構
移動することができない植物は、環境からストレスを受けると細胞分裂を一時停止させ、ストレスへの対処を優先させます。したがって、ストレス下で植物の生産性を上げるためには、ストレスに曝されても細胞分裂を止めない植物を創る必要があります。私達は最近、植物が様々な環境ストレスに応答して細胞周期を停止させる共通の仕組みを明らかにしました(図2)。そこで現在、そのシグナル伝達機構を解明することにより、野外環境下で複合ストレスに曝されても成長を続けるスーパーストレス耐性植物の作出を試みています。
幹細胞の再生・維持機構
植物は一生を通じて成長を続け、個体を大きくします。このような成長様式を実現するには、様々なストレスに曝されても多能性幹細胞を絶やさない仕組みが必要です。しかし、植物の幹細胞を維持する機構については未解明な部分が多くあります。私達は、ストレスに応答して幹細胞を死滅させ、新たな幹細胞を再生する仕組みについて研究しています(図3)。また、幹細胞ゲノムの恒常性を維持する機構を解明することにより、植物の持続的な成長を支える生存・成長戦略を理解しようとしています。

クロマチン構造変化によるDNA倍加の誘導機構を解明することにより、食料・バイオマスの増産につながるDNA倍加の誘発技術を開発する。

DNA損傷や高温ストレスを受けると、植物は独自の転写カスケードを活性化し、細胞周期をG2期で停止させる。この制御系を改変することにより、複合ストレス下でも成長を続ける耐性植物の作出が期待される。

シロイヌナズナの根がDNA損傷を受けると、幹細胞が細胞死を起こすとともに、隣接する静止中心細胞が分裂を開始し、新たな幹細胞を再生する。これにより根は成長を続けることができる。左の写真で赤く染まった部分が死んだ幹細胞。
主な発表論文・著作
- Takatsuka H. et al., J. Exp. Bot., erad091, 2023
- Takahashi N. et al., Sci. Adv., 7, eabg0993, 2021
- Shimotohno A. et al., Annu. Rev. Plant Biol., 72, 273-296, 2021
- Umeda M. et al., Plant J., 106, 326-335, 2021
- Watanabe S. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 117, 31500-31509, 2020
- Umeda M. et al., Curr. Opin. Plant Biol., 51, 1-6, 2019
- Takahashi N. et al., eLife, 8, e43944, 2019
- Takatsuka H. et al., Plant Physiol., 178, 1130-1141, 2018
- Ogita N. et al., Plant J., 94, 439-453, 2018
- Chen P. et al., Nature Commun., 8, 635, 2017
- Ueda M. et al., Genes Dev., 31, 617-627, 2017
- Kobayashi K. et al., EMBO J., 34, 1992-2007, 2015
- Yin K. et al., Plant J., 80, 541-552, 2014
- Takahashi N. et al., Curr. Biol., 23, 1812-1817, 2013
- Yoshiyama K.O. et al., EMBO Rep., 14, 817-822, 2013