研究室・教員

発生医科学 (笹井研究室)

笹井紀明准教授の顔写真
准教授
笹井 紀明
助教
篠塚 琢磨
Email
{ noriakisasai, takuma.shinozuka}@bs.naist.jp
研究室HP
https://bsw3.naist.jp/sasai/

研究・教育の概要

発生生物学を主軸とした、生体組織の構築と機能維持のメカニズムに関する研究
中枢神経系は個体の感覚や行動を制御する器官で、さまざまな種類の細胞で構成されています。これらの細胞は主に胚発生の段階で構築されますが、それぞれの細胞の配置や数は厳密に制御されています。私たちはこのメカニズムを明らかにするために、実験系としてニワトリやマウスの胚、およびマウス胚性幹細胞(ES細胞)を実験系として用いて研究に取り組んでいます。

また、神経系はいったん異常をきたすと自然には回復しないため、体全体の機能を保つためには神経系は生涯にわたって正常に機能しなければなりません。そこで、神経細胞が恒常的に働くメカニズムを明らかにします。現在、遺伝性の眼疾患を発症するモデルマウスを使用し、新しい治療法を提案することを目指しています。

このように、発生生物学・細胞生物学を主軸にして、生体の組織構築のメカニズムを探るほか、その知見を利用して生物学と基礎医学をつなぐ、学際的な研究を展開しています。

主な研究テーマ

中枢神経系の発生に関与するシグナル伝達経路の解明

胚発生の段階では、未熟な細胞が前駆状態という過程を経て徐々に成熟していきます。この過程では、多くのシグナル分子が関与しており、これらが細胞の成熟や増殖に必須の役割を果たしています。私たちは、これらの分子の機能を明らかにすることにより、器官が発生して行く過程を分子レベルで再構築することを目指しています。

ソニック・ヘッジホッグシグナルの分子基盤に関する研究

ソニック・ヘッジホッグ(Sonic Hedgehog; Shh)は、神経分化のほか、細胞増殖や生死、個体の寿命など、様々な生物学的活性を持つ分泌因子です。私たちは、この細胞内シグナル経路の調節分子を解析することにより、この活性の多様性を生み出す背景を明らかにすることを目指しています。

神経細胞の機能維持に関する研究

神経系はいったん機能不全に陥ると自然に治癒することはほとんどないため、各神経細胞の生存・機能を維持することが重要です。たとえば、ある膜タンパク質をコードする遺伝子に変異が生じると視神経細胞が変性して眼疾患が引き起こされることが明らかになっています。そこで、このメカニズムを明らかにすることにより、疾患が起きる原因を突き止め、細胞の機能維持や、疾病に対する治療法や予防法を提案することを目指しています。

ニワトリの4日胚
(図1) ニワトリの4日胚
培養皿上で維持しているドーパミン神経細胞
(図2) 培養皿上で維持しているドーパミン神経細胞
(図3) Prominin-1 (Prom1) の遺伝子欠損マウスの、視神経における表現型。(A,B) 外節と呼ばれる領域が崩壊し、(C,D) ロドプシンの細胞内の局在異常が認められた。
(図3) Prominin-1 (Prom1) の遺伝子欠損マウスの、視神経における表現型。(A,B) 外節と呼ばれる領域が崩壊し、(C,D) ロドプシンの細胞内の局在異常が認められた。

主な発表論文・著作

  1. Yamamoto#, Ong# et al., Development Growth and Differentiation, 2022
  2. Katsuyama et al., Developmental Dynamics, 251, 350-361, 2022
  3. Kobayashi et al., Disease Models and Mechanisms, 144, dmm048962, 2021
  4. Sasai et al., Development Growth and Differentiation, 63, 26-37, 2021
  5. Yatsuzuka et al., Development, 146, dev176784, 2019
  6. Kadoya and Sasai, Frontiers in Neuroscience, 13, 1022, 2019
  7. Sasai et al., Frontiers in Genetics, 10, 1103, 2019
  8. Hori et al., Sci. Rep. 9, 15911, 2019
  9. 脳科学辞典(https://bsd.neuroinf.jp/wiki/位置情報)2018
  10. 脳科学辞典(https://bsd.neuroinf.jp/wiki/神経誘導)2017