機能ゲノム医学 (石田研究室)

- 准教授
- 石田 靖雅
- 助教
- 岡 千緒、 松田 永照、重岡 稔章
- {ishiday, coka, ematsuda, t.shigeoka }@bs.naist.jp
- 研究室HP
- https://bsw3.naist.jp/ishida/
研究・教育の概要
当研究室の最大の特徴は、3名の教員全員が、大学の医学部で医師を育成するためのトレーニングを受けた点にあります。そのため当研究室では、常にヒト疾患を念頭に置き、その発症メカニズムや治療法に関する基礎研究を推進します。石田准教授のグループは、免疫学的な自己-非自己識別においてPD-1が果たす役割の解明を目指します。岡助教のグループは、HtrA1プロテアーゼの発現異常とヒト疾患発症メカニズムの関連を究明します。松田助教のグループは、転写制御因子CIBZが哺乳動物の初期発生において果たす役割を解析します。
主な研究テーマ
PD-1の生理機能に関する研究
1991年秋、京都大学の石田らはひとつの新規遺伝子を発見し、programmed death-1 (PD-1) と命名しました。PD-1は、抗原で活性化されたT細胞上に発現されるI型膜タンパク質です。当初その働きは不明でしたが、後の研究により、過剰な免疫応答を沈静化するというPD-1の基本的な生理的機能が解明されました。最近では、抗体でPD-1のこの機能を阻害してT細胞を活性化し、宿主の免疫力によってがん細胞を駆逐する方法が開発され、2018年12月には、京都大学の本庶佑教授にノーベル生理学医学賞が授与されました。しかしながら、免疫学的な自己―非自己識別の際にPD-1が果たす役割については、依然として謎の部分が多いため、私たちはその解明を目指し、研究を推進しています。
様々なヒトの疾患に関わる分泌型セリンプロテアーゼHtrA1の研究
HtrA1遺伝子の変異による機能低下は遺伝性の血管性認知症であるCARASILの原因となります。一方、HtrA1遺伝子の多型による発現増加は、高齢者の失明の原因として重要な加齢黄斑変性(AMD)の発症リスクを高めます。その他、HtrA1の異常は関節炎や妊娠性高血圧症、がんにも関連します。私たちは、特にAMDとCARASILの病態形成においてHtrA1の機能がどのように関与するかの解明を目的に、HtrA1遺伝子欠損マウスや、ヒトやマウスの培養細胞を用いて研究をしています。
転写因子Zbtb38の機能解析
当研究室で同定したZbtb38/CIBZ転写因子は細胞増殖・分化・細胞死の制御に重要な役割を担っています。しかし、Zbtb38のヘテロ欠損マウスは早期胎生致死を引き起こしますため、生体内におけるZbtb38の機能は未解明な点が多いです。私たちはZbtb38の生理的な機能と制御機構を明らかすることで、この遺伝子が関与する神経変性などの疾患の原因解明に向けて研究を進めています。
主な発表論文・著作
- Nishio, M. et al., Cell Prolif., e13215, 2022
- Bai, J. et al., Genesis, 58, e23386, 2020
- Ishida, Y., Cells, 9, 1376, 2020
- Ikawati, M. et al., PLoS One, 13, e0196628, 2018
- Yamanishi, A. et al., Nucleic Acids Res., 46, e63, 2018
- Kotoku, T. et al., Sci. Rep., 6., 34188, 2016
- Hasan, M. Z. et al., Dev. Biol., 397, 89-102, 2015
- Supanji et al., Exp. Eye Res., 12, 79-92, 2013
- Nishii, T. et al., J. Biol. Chem., 287, 12417-12424, 2012
- Shigeoka, T. et al., Nucleic Acids Res., 40, 6887-6897, 2012
- Mayasari, N. I. et al., Nucleic Acids Res., 40, e97, 2012
- Shigeoka, T. et al., Nucleic Acids Res., 33, e20, 2005
- Matsuda, E. et al., Proc. Natl. Acad. Sci., USA, 101, 4170-4174, 2004
- Ishida, Y. et al., EMBO J., 11, 3887-3895, 1992