機能ゲノム医学 (石田研究室)
- 准教授
- 石田 靖雅
- 助教
- 松田 永照
- 重岡 稔章
- 研究室HP
- https://bsw3.naist.jp/ishida/
Bio Discovery Session NAIST Edge BIO(第3回、第28回 )
研究・教育の概要
当研究室では、常にヒト疾患を念頭に置き、その発症メカニズムや治療法に関する基礎研究を推進します。石田准教授のグループは、免疫学的な自己-非自己識別においてPD-1が果たす役割の解明を目指します。松田助教のグループは、転写制御因子CIBZが哺乳動物の初期発生において果たす役割を解析します。
主な研究テーマ
PD-1の生理機能に関する研究
1991年秋、京都大学の石田らはひとつの新規遺伝子を発見し、programmed death-1 (PD-1) と命名しました。PD-1は、抗原で活性化されたT細胞上に発現されるI型膜タンパク質です。当初その働きは不明でしたが、後の研究により、過剰な免疫応答を沈静化するというPD-1の基本的な生理的機能が解明されました。最近では、抗体でPD-1のこの機能を阻害してT細胞を活性化し、宿主の免疫力によってがん細胞を駆逐する方法が開発され、2018年12月には、京都大学の本庶佑教授にノーベル生理学医学賞が授与されました。しかしながら、免疫学的な自己―非自己識別の際にPD-1が果たす役割については、依然として謎の部分が多いため、私たちはその解明を目指し、研究を推進しています。
転写因子Zbtb38の機能解析
当研究室で同定したZbtb38/CIBZ転写因子は細胞増殖・分化・細胞死の制御に重要な役割を担っています。しかし、Zbtb38のヘテロ欠損マウスは早期胎生致死を引き起こしますため、生体内におけるZbtb38の機能は未解明な点が多いです。私たちはZbtb38の生理的な機能と制御機構を明らかすることで、この遺伝子が関与する神経変性などの疾患の原因解明に向けて研究を進めています。
神経細胞軸索中での局所翻訳に関する研究
神経回路の形成は、神経細胞が軸索と呼ばれる突起を標的細胞へ伸長させる過程により開始されます。核から遠く離れた軸索の末端に存在するタンパク質のほとんどは、細胞体で合成され、タンパク質の軸索輸送により供給されます。しかし、私たちは多くの神経変性疾患の原因遺伝子や軸索の生死を制御する遺伝子のmRNAが、発生段階の軸索内部で局所的に翻訳されていることを明らかにしました。これらの遺伝子の軸索内局所翻訳の神経発生における役割や神経難病への影響を解明するための研究を進めています。
主な発表論文・著作
- Nishio, M. et al., Cell Prolif., 55, e13215, 2022
- Bai, J. et al., Genesis, 58, e23386, 2020
- Ishida, Y., Cells, 9, 1376, 2020
- Shigeoka, T. et al., Cell Reports, 10, 3605-3619, 2019
- Shigeoka, T. et al., Cell, 166, 182-192, 2016
- Kotoku, T. et al., Sci. Rep., 6., 34188, 2016
- Nishii, T. et al., J. Biol. Chem., 287, 12417-12424, 2012
- Shigeoka, T. et al., Nucleic Acids Res., 40, 6887-6897, 2012
- Shigeoka, T. et al., Nucleic Acids Res., 33, e20, 2005
- Matsuda, E. et al., Proc. Natl. Acad. Sci., USA, 101, 4170-4174, 2004
- Ishida, Y. et al., EMBO J., 11, 3887-3895, 1992