NAIST 奈良先端科学技術大学院大学 バイオサイエンス領域

研究室・教員

腫瘍細胞生物学 (加藤順也研究室)

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教授
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特任准教授
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研究室HP
https://bsw3.naist.jp/kato/

研究・教育の概要

腫瘍細胞の増殖、分化、生存を制御する分子機構についての研究を行っています。研究の分野としては、細胞周期制御、がん代謝、白血病、がん幹細胞、ROS制御が含まれます。これらの分野の研究から腫瘍細胞の特性を明らかにし、その成果は、がんの診断や治療に役立てます。現在は、(1)クルクミン関連分子によるがん抑制、(2)CSN5と細胞がん化、(3)細胞がん(白血病)化と脂質代謝、(4)がん細胞周期とがん代謝のプロジェクトが進行中です。

主な研究テーマ

腫瘍細胞の増殖、分化、生存を制御する分子メカニズム

細胞周期制御とチェックポイントコントロール

細胞が増殖するか、あるいは、分化などに向かうかは細胞周期のG1期で決定されます。そのため、癌細胞ではG1期の進行を制御する因子(サイクリンD1/E、Cdk2/4、Cdkインヒビターp27/p21、Rb癌抑制蛋白質など)の変異が多く見られます。放射線や化学物質によりDNAに損傷が起こると、細胞周期を止め修復を行います。このチェックポイントコントロール機構で重要な役割を果たすのが、癌抑制遺伝子産物p53です。私たちはこれらの因子の分子機能を調べています。

細胞老化、細胞分化、アポトーシス

細胞の癌化には、細胞周期の異常以外にも、老化、分化や死のメカニズムが脱制御される必要があります。私たちは、老化誘導、分化誘導や細胞死誘導できる培養系を用いて、癌化と関係する老化阻害、分化阻害やアポトーシスの仕組みについて調べています。

白血病と癌の幹細胞

血液の癌のうち、AML(急性骨髄性白血病)、MDS(骨髄異形成症候群)、CML(慢性骨髄性白血病)に興味を持ち、その原因遺伝子の分子機構と白血病の発症機構を研究しています。また、近年注目されている癌の幹細胞(白血病幹細胞)にも焦点を当て、正常の造血幹細胞がいかにして癌化(白血病化)するかについて明らかにしようとしています。

がん代謝

がん細胞は、自らの代謝経路を再編成することにより独自の代謝ネットワーク(がん代謝)を構築して、細胞がん化やがんの悪性化の過程に役立てています。私たちは代謝経路の下流に位置する活性酸素種(ROS)に注目したプロジェクトを進めています。

  • クルクミン関連分子によるがん抑制
  • CSN5と細胞がん化
  • がん細胞周期とがん代謝
図1
(図1) がん細胞は正常細胞から生まれる
図2
(図2) 細胞周期とサイクリン/Cdk複合体
図2
(図3) 白血病発祥のモデル
図2
(図4) がん代謝を利用したがん抑制(ROSを介したがん細胞増殖抑制)

主な発表論文・著作

  1. Kamitani N, et al., Sci Rep., 12, 22419, 2022
  2. Ito H, et al., J Clin Invest. 131, 12, 2021
  3. Lestari B, et al., Sci Rep., 9, 14867, 2019
  4. Yoshida A, et al., Blood., 122, 1750-1760, 2013
  5. Yoshida A, et al., Sci Rep., 3, 1054, 2013
  6. Kato JY and Yoneda-Kato N., Genes to Cells 14, 1209, 2009
  7. 加藤順也, 加藤規子, 実験医学, 28, 463, 2010
  8. 加藤順也, 加藤規子, 細胞工学, 28, 1166, 2009
  9. Yoneda-Kato N. et al., EMBO J., 24, 1739, 2005
  10. Tomoda K. et al., Nature, 398, 160, 1999
  11. Kato J-Y. et al., Cell, 79, 487, 1994