研究成果

研究成果

ストレス微生物科学研究室の高木博史教授らは、沖縄県「琉球泡盛調査研究支援事業」の一環として、新しい泡盛酵母(101H酵母)を開発しました。

 ストレス微生物科学研究室の高木博史教授らは、バイオジェット、琉球大学と共同研究を行っている沖縄県「琉球泡盛調査研究支援事業」の一環として、新しい泡盛酵母(101H酵母)を開発しました。また、101H酵母を用いた泡盛の試験醸造を沖縄の酒造所(新里酒造)で行なうことになりました。101H酵母は親株(泡盛101号酵母)よりも芳香成分が強く、フルーティーな風味を引き出すことが期待されており、従来の泡盛との差別化を目的に、2015年度内に101H酵母による泡盛の商品化を目指す予定です。 

本件研究成果が、沖縄の新聞社で報道されました。
琉球新報
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-239237-storytopic-4.html
沖縄タイムス
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150220-00000000-okinawat-oki

高木教授のコメント

 沖縄の伝統的蒸留酒「泡盛」は香りと味に特徴があり、それらの生成には酵母が関与しますが、菌株の育種はこれまでほとんど行われていません。一方、パンや清酒の主要な香気成分「酢酸イソアミル」とその前駆体「イソアミルアルコール」の生成に必須であるロイシン(Leu)は、α-イソプロピルリンゴ酸合成酵素(IPMS)の活性がLeuによるフィードバック阻害を受けることで細胞内の合成量が制御されています(下図)。私たちは、Leuアナログ(TFL)に耐性を示す突然変異株の中から、親株に比べ細胞内のLeu含量および泡盛中のイソアミルアルコール含量が有意に増加した株を単離し、その特性を解析しました。その結果、IPMS内に同定したアミノ酸置換が、TFL耐性、Leu蓄積、フィードバック阻害解除を引き起こすことを明らかにし、アミノ酸置換に伴う立体障害がフィードバック阻害解除の原因であると結論付けました。
 本研究は泡盛酵母の育種に関する初めての論文であるとともに、アミノ酸アナログ耐性変異株の取得が泡盛酵母においても有効な育種法であり、かつ泡盛の高付加価値化(香味性の向上)に有用であることを実証しました。
変異株の分離と解析に取り組んだ橋田恵介研究技術員(現・木下酒造)をはじめ、共同研究者の皆様(渡辺大輔助教、那須野亮研究員、奈良県産業振興総合センター・大橋正孝氏、バイオジェット・塚原正俊氏、鼠尾まい子氏、伊波朋哉氏)に深く感謝します。今回、「研究シーズの実用化による沖縄への貢献」という永年の夢の実現に一歩近づき、応用微生物学の研究者として大変嬉しく思います。今後は確立した変異育種技術を泡盛以外の産業酵母(パン、清酒、ワイン、バイオエタノールなど)にも応用したいと考えています。 



図. 酵母におけるロイシン・イソアミルアルコールの生合成経路

参考文献

H. Takagi, K. Hashida, D. Watanabe, R. Nasuno, M. Ohashi, T. Iha, M. Nezuo, and M. Tsukahara: Isolation and characterization of awamori yeast mutants with L-leucine accumulation that overproduce isoamyl alcohol. J. Biosci. Bioeng., 119, 140-147 (2015).

【ストレス微生物科学】

研究室紹介ページ:http://bsw3.naist.jp/courses/courses305.html
研究室ホームページ:http://bsw3.naist.jp/takagi/

(2015年02月27日掲載)

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