研究成果の紹介
バイオサイエンス研究科動物細胞工学研究室の河野憲二教授が2012年度日本農芸化学会賞を受賞
バイオサイエンス研究科動物細胞工学研究室の河野憲二教授が日本農芸化学会の2012年度日本農芸化学会賞を受賞しました。本賞は、農芸化学の分野で学術上または産業上、特に優秀な研究業績を納めた会員に授与される日本農芸化学会の最高賞です。昭和29年から60年までは鈴木梅太郎博士の名前を冠した「鈴木賞」と呼ばれていました。本学在職者では、山田康之前学長、大山完爾前教授、磯貝彰現学長が授与されています。
受賞コメント
農芸化学会賞を受賞できたこと、本当に身に余る光栄なことと思っております。特に今回の受賞対象となった研究業績の多くは、1993年に本学に赴任以来進めてきた研究であり、その意味で研究室のスタッフ・院生に感謝するとともに、本賞の受賞を共に喜びたいと思っています。また、このような研究を進めることができたのも、奈良先端大のすぐれた研究環境や支援体制であり、本学の教員・事務の方々にもこの場をかりて感謝の意を伝えたいと思います。今後も本賞の受賞をかてに、若い人達と一緒に、さらに有意義で面白い研究を発展させていきたいと思っていますので、今後ともよろしく御願い致します。
受賞時の発表内容
「蛋白質の合成・成熟・品質管理を基盤とした分子生物学・細胞工学的研究」
蛋白質はDNAから転写、翻訳され合成されることは周知の事実であるが、それで100%の生理機能をもつわけではない。蛋白質は翻訳過程で様々な修飾を受け、その後正しい立体構造をとり、適切な場に輸送されて初めて機能する。細胞にはこのような蛋白質の合成・成熟過程が正しく進行しているかどうかを見極め、異常蛋白質が生じた場合にはそれらを適切に処理する品質管理機構が備わっている。近年明らかにされてきた小胞体ストレス応答は、その品質管理機構の代表的なシステムであり、分泌経路の蛋白質の合成・成熟・分解を統合的に調整し細胞の生存を保証する役割をもっている。この品質管理機構を、分子・細胞レベルで理解することは、生命の基本的な理解に通じるだけでなく、構造異常蛋白質により生じる疾患原因の究明や治療、また微生物や細胞を用いた蛋白質の効率良い生産への応用にも大変有用である。また、蛋白質合成を特異的に阻害するジフテリア毒素とその受容体(ヒトHB-EGF)を利用することにより、動物個体の特定の細胞のみを任意の時期にノックアウトできるTRECK (Toxin Receptor-mediated conditional Cell Knockout) 法を開発した。TRECK法はヒト疾患モデル動物の作製や細胞機能解析、移植再生研究に極めて有用な方法であり、世界中の研究室で利用されている。
(2012年04月03日掲載)