NAIST 奈良先端科学技術大学院大学 バイオサイエンス領域

研究成果の紹介

バイオサイエンス領域 植物生理学研究室 特別研究学生の上本恭平さん (京都大学生命科学研究科 統合生命科学専攻 分子代謝制御学分野 後期博士課程2年)が日本時間生物学会学術大会優秀ポスター賞を受賞

バイオサイエンス領域 植物生理学研究室 特別研究学生の上本恭平さん (京都大学生命科学研究科 統合生命科学専攻 分子代謝制御学分野 後期博士課程2年)が日本時間生物学会学術大会優秀ポスター賞を受賞しました(令和2年9月27日)。

受賞研究課題名

Organ-to-organ coupling via nutrient transport stabilizes circadian period
(日本語タイトル:栄養素を介した器官間カップ リングによる概日周期の安定化の仕組み)

受賞のコメント

本研究に協力していただいた全ての方々に深く感謝いたし ます。今回の受賞を励みにし、今後も研究成果を通じて領域に貢献できるよう精 進してまいります。

受賞内容

多細胞生物では、細胞内でのフィードバック制御に加え、細胞 間、組織間、器官間など様々なスケールでの時間情報伝達が報告されている。植 物では、こうした時間情報伝達は、個体レベルでの協調的な概日リズム形成およ び協調的な成長制御に関わっていると考えられている。しかし、具体的にどのよ うな因子が関わっているのか、実際に生物学的意義があるのかなどについては未 だ不明な点が多い。そこで、本研究では地上部-根の間での時間情報伝達に着目 し、詳細なメカニズムの解析を行った。 概日時計による制御を受けたショ糖の 輸送は、根におけるPSEUDO RESPONSE REGULATOR 7 (PRR7)の発現パターンおよび H+-ATPaseの一種であるAHA1の活性を制御していることを明らかにした。さら に、根のPRR7およびAHA1によって周期的な陽イオンの取り込みリズムが形成され ていることを見出した。そこで、接ぎ木実験や欠乏実験を用いて陽イオンの取り 込みリズムを阻害したところ、地上部の概日周期が個体間で大きくばらつくこと を明らかにした。こうした概日周期のばらつきは、光合成阻害剤であるDCMUによ るショ糖の輸送リズムの阻害でも観察された。以上のことから、植物は維管束を 介した栄養素の輸送を通じて、地上部-根の間での双方向性の時間情報伝達を形 成していることを明らかにした。こうした仕組みは、ノイズの多い環境において 概日リズムを安定化させる働きがあると考えられる。

関連資料
https://bsw3.naist.jp/endo/

日本時間生物学会
http://chronobiology.jp/

【植物生理学研究室】
研究室紹介ページ:https://bsw3.naist.jp/courses/courses115.html
研究室ホームページ:https://bsw3.naist.jp/endo/

(2020年10月05日掲載)

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