NAIST 奈良先端科学技術大学院大学 バイオサイエンス領域

研究成果の紹介

バイオサイエンス研究科原核生物分子遺伝学研究室の秋山昌広准教授らが「GGS prize 2013」を受賞

 バイオサイエンス研究科・原核生物分子遺伝学研究室の秋山昌広准教授らの研究グループが、新しいタイプのバクテリア細胞死を日本遺伝学会の学会誌Genes & Genetic Systems (GGS)に公表したところ、池田美央(D3)を筆頭著者とする当該論文が「GGS prize 2013」を受賞しました。GGS prizeはGGSに掲載された論文を対象として、GGS編集委員・編集顧問による合同会議で選考されて、優れた学術論文1~2編に与えられます。

授賞コメント

秋山昌広
 日本遺伝学会・第85回大会の総会で、GGS prize 2013に選出されたことを初めて知りましたので、サプライズな受賞となり驚きました。歴史ある日本遺伝学会の会員である諸先生に地味なバクテリアの基礎研究を評価して戴き、大変うれしく思っております。また、この受賞の対象となった研究は、真木研究室のスタッフや学生の皆様をはじめ多くの方に支えられて達成できたものであり、心より感謝しております。この栄えある受賞を励みとして、もっとユニークで本質的な分子遺伝学の研究を目指していきたいと思っております。 

池田美央
 この度、GGS prize 2013に選出して頂きましたこと、大変光栄に存じます。多数の論文が掲載された中で、このように大腸菌を用いた非常に基礎的な研究を評価して頂けたことは喜ばしく、また、研究を続ける上でのモチベーションにもなりました。研究を進めるにあたり御指導頂きました真木壽治教授、秋山昌広准教授をはじめ、研究を支えて下さった皆様には、この場を借りて厚く御礼申し上げます。

受賞時の発表内容

 DNAの損傷などによるDNA複製の阻害は、ゲノムを不安定にして遺伝情報の恒常性を脅かします。そのため、全ての細胞は様々なDNA修復機構の活性化によってDNA複製の阻害を解消して遺伝情報を守ります。さらに、ヒトを含めた真核生物では、修復できないゲノムの異常を被った細胞の細胞死を誘導することによって、異常な細胞の増殖を防ぎます。しかし、DNA複製研究のリーディングモデルである大腸菌において、DNA複製の阻害を解消できない細胞の運命については良く分かっていません。
 これまでに原核生物分子遺伝学研究室において、大腸菌の5つのDNAポリメラーゼの一つがDNA複製にブレーキをかけることが見出されています。今回、私たちは、このDNAポリメラーゼの遺伝子を過剰に発現させてDNA複製を急停止させた大腸菌細胞を解析しました。その結果、この細胞は生きているが、複製終結点を含むゲノムDNA領域に欠損を生じて迅速に増殖能力を失うという新しいタイプのバクテリア細胞死を見出しました。

受賞論文

Quick replication fork stop by overproduction of Escherichia coli DinB produces non-proliferative cells with an aberrant chromosome.
Mio Ikeda, Yutaka Shinozaki, Kaori Uchida, Yasuha Ohshika, Asako Furukohri, Hisaji Maki and Masahiro T. Akiyama. Genes & Genetic Systems (2012) 87 (4): 221-231.

(2013年10月18日掲載)

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