研究成果

研究成果

バイオサイエンス研究科植物成長制御研究室の梅田正明教授・高橋直紀助教らが、植物の根の成長を調節する新たな仕組みを解明

 バイオサイエンス研究科植物成長制御研究室の梅田正明教授・高橋直紀助教らは、植物の根の成長を調節する新たな仕組みを発見した。この研究成果は、平成25年9月12日付けでCurrent Biology(オンライン)に掲載されると共に、産経新聞、奈良新聞、NHKなどで取り上げられた。 

梅田正明教授のコメント

 植物の根の形態や成長に関する研究は、主にシロイヌナズナを用いた遺伝学によって明らかにされてきました。中でもオーキシンという植物ホルモンが重要であることが知られています。サイトカイニンのような他の植物ホルモンも根の成長を制御することはわかっていましたが、あくまでもオーキシンシグナルとのクロストークの観点から理解されていました。今回、私達はサイトカイニンがオーキシンを介さずに細胞周期を直接制御し、細胞分裂からDNA倍加への移行を促進することを見出しました。DNA倍加は細胞成長や細胞分化と密接に結びついているので、今回の発見はサイトカイニンが根端の分裂細胞の数や根の成長を左右する本質的な要素であることを示しています。今後は、ストレス時にこのようなメカニズムを植物がいかに利用し、根の成長をコントロールしているのかを明らかにしていきたいと考えています。 

研究の概要

【研究背景】
 植物の根は、水分や栄養分を吸収するとともに植物体を支える重要な器官であり、その成長は植物体全体の成長を大きく左右する。植物の根は先端部分に根端分裂組織と呼ばれる組織を持っており、細胞はそこで盛んに分裂を行っている。そして、根端分裂組織から出て分裂を停止すると、今度はDNA倍加を行うことにより細胞を肥大化させる(図1)。根の成長は根端分裂組織で細胞分裂がいかに盛んに行われるかによって決まることから、細胞分裂からDNA倍加へ移行するタイミングが根の成長スピードに大きく影響を与える。これまでの研究で、根端分裂組織での細胞分裂はサイトカイニンとオーキシンという2つの植物ホルモン間の拮抗的な作用により制御されることが知られていたが(図2)、細胞分裂からDNA倍加への移行を直接制御するメカニズムは知られていなかった。 

【結果】
 梅田教授らはDNA倍加の制御機構を明らかにするために、DNA倍加を促進する遺伝子であるCCS52A1の発現制御について解析した。その結果、CCS52A1遺伝子はDNA倍加が始まる数細胞前の細胞から発現を開始すること、またその発現の活性化にはサイトカイニンシグナルの下流で働く転写因子ARR2が直接働くことを明らかにした(図2)。ARR2-CCS52A1という分子モジュールが細胞分裂からDNA倍加への移行に中心的な役割をもつことが示され、根端分裂組織の大きさと根の成長を調節する全く新奇な機構が明らかになった。 

【本研究の意義】
 細胞分裂からDNA倍加への移行のタイミングが根の成長を決定する重要な要因であることから、本研究で明らかにしたARR2などの遺伝子の発現量を操作することにより、根端分裂組織の大きさを自在に制御し、根の成長を人為的に調節することが可能となる。例えば乾燥地で根の成長を促進し水分吸収を向上させれば、農作物の収量増加や植物バイオマスの増産をもたらす技術開発につながるであろう。逆に水消費量の多い植物で根の成長を抑制すれば、土壌水分の枯渇を防ぎつつ植物バイオマスの効率的生産が可能となる。 



図1 根端分裂組織の大きさが根の成長を決める



図2 細胞分裂からDNA倍加への移行が根端分裂組織の大きさを決める

(2013年09月19日掲載)

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