NAIST 奈良先端科学技術大学院大学 バイオサイエンス領域

研究成果の紹介

生殖細胞は再生する!謎の機構を世界で初めてミミズで解明

バイオサイエンス科の高橋淑子教授らの研究グループは、これまで謎とされていた動物の生殖器官が再生する仕組みを世界で初めて突き止めた。再生能力がある小型のミミズを使い、精子や卵子の元になる生殖細胞が体全体に散らばっていて、体が寸断されても絶妙なタイミングで切断ポイントに移動して新たな生殖器官を作り出すことが分かった。進化の上で有性生殖の能力の獲得は生物の多様性を育んだとされており、その機構の解明だけでなく、生殖医療などの再生医療にもつながると期待されている。この成果は5月23日付けの米国生物学誌「カレントバイオロジー」オンライン版に掲載された。

高橋教授らは、環境により自分の体を切断して増殖する無性生殖と、雌雄の個体が接合する有性生殖を繰り返すというユニークな小型環形動物、ヤマトヒメミミズに着目。体の数箇所で切断したところ、尾などどの部分からも、生殖能力を持った個体にもどり、生殖器官が再生されることがわかった。また、分子生物学の最新技法を使い、生殖細胞だけを染色して再生の仕組みを調べたところ、体細胞とは異なる生殖細胞予備軍ともいえる細胞が体全体に散らばっていた。さらに、体細胞が生殖器官をつくる環境を整えた時点で、そこに生殖細胞が移動し、生殖器官の再生に加わることも明らかになった。

掲載論文

Tadokoro R, Sugio M, Kutsuna J, Tochinai S, Takahashi Y. Early Segregation of Germ and Somatic Lineages during Gonadal Regeneration in the Annelid Enchytraeus japonensis. Curr Biol. 2006 May 23;16(10):1012-7.

(2006年05月24日掲載)

研究成果一覧へ


Share:
  • X(twitter)
  • facebook