NAIST 奈良先端科学技術大学院大学 バイオサイエンス領域

研究成果の紹介

森田美代助教授が平成17年度日本植物生理学会奨励賞を受賞

本賞は、若手研究者による植物科学関連分野の研究を奨励するため、特に国際的にも優れた研究を発表し、なお将来の発展を期待できる者に授与されるものです。

日本植物生理学会のページ

受賞コメント

この度は、同賞を受賞することができて大変光栄に思います。この賞は私が本学バイオサイエンス研究科に赴任して以来新たに取り組んできた研究に対するものです。常に御助力をいただいた田坂昌生教授をはじめ、共に研究をしていただいたポスドク,大学院生の皆さん、共同研究者の方々、実験や事務をサポートしていただいた非常勤職員の皆さん、忍耐を持って支えてくれた家族に深く感謝して致しております。今回の受賞を励みに、今後も独自の研究を展開していけるよう更に努めたいと思います。

受賞内容

「高等植物の重力屈性に関わるメンブレントラフィック・ダイナミクスの研究」

植物の根は地中に、茎は空に向かって伸びる。植物はどのようにして重力の方向を知り、成長方向を変えるのだろうか?私達はこの重力屈性という興味深い現象を分子の言葉で理解しようと、シロイヌナズナというモデル植物を使って研究している。シロイヌナズナの茎は横に倒すとおよそ90分で真上に向く ( 図1 ) 。高等植物は、平衡細胞と呼ばれる特殊な細胞の働きにより重力方向を感受する。平衡細胞には、デンプンを含む色素体 ( アミロプラスト ) というオルガネラがあり、これが重力の方向に沈む。シロイヌナズナの茎の平衡細胞は内皮細胞であり ( 図2、3 ) 、その内部にも重力方向に沈むアミロプラストがある ( 図3黒矢頭 ) 。今回私達は、このアミロプラストが重力刺激に応じてどのように動くのか、またその動きには内皮細胞の体積のほとんどを占める液胞というオルガネラが関わることを、生きた細胞を観察することで初めて示した ( 図4:アミロプラスト ( 赤色 ) は液胞膜 ( 緑色 ) に包まれて細胞内を移動する ) 。また、重力屈性能を失った変異体の解析から、液胞への細胞内小胞輸送 ( 図5 ) がアミロプラストの移動による重力の感受に深く関わることを分子レベルで明らかにした。

関連する論文
  1. Saito C, Morita MT, Kato T, Tasaka M.
    Amyloplasts and vacuolar membrane dynamics in the living graviperceptive cell of the Arabidopsis inflorescence stem. Plant Cell. 2005 Feb;17 ( 2 ) :548-58.
  2. Niihama M, Uemura T, Saito C, Nakano A, Sato MH, Tasaka M, Morita MT.
    Conversion of functional specificity in Qb-SNARE VTI1 homologues of Arabidopsis. Curr Biol. 2005 Mar 29;15 ( 6 ) :555-60.

(2006年05月31日掲載)

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