研究成果の紹介
相田光宏助手が平成18年度日本植物学会奨励賞を受賞
9月12日付けで、形質発現植物学講座の相田光宏助手が、平成18年度日本植物学会奨励賞を受賞しました。本賞は、植物学に関する優れた研究を行う若手研究者に授与されるものです。
受賞コメント
道ばたに生えるちいさな雑草から、高さ100メートル以上にも及ぶ樹木まで。植物の多様な形づくりの不思議に魅せられ、これまで楽しく研究を続けることができました。今回賞をいただいた研究は、たくさんの共同研究者の方々のご指導・ご協力の賜物であり、深く感謝いたします。この受賞を励みに、これからも新たな発見に向けて研究を続けていきたいと思います。
受賞内容
「シロイヌナズナを用いた茎頂・根端分裂組織と器官形成に関する研究」高さ数十メートルにも達する巨大な樹木が示すとおり、植物の成長する能力には著しいものがある。この成長の原動力は、分裂組織と呼ばれるごく小さな組織のはたらきに由来する。分裂組織は茎と根の先端部にあり、細胞分裂をさかんに行うことで、各種の器官をつくるための細胞の「供給源」としてはたらく。今回受賞対象となった研究では、植物の分裂組織がどのように形成されるのかという問題に着目した。まず、子葉が融合してカップ型になるシロイヌナズナの突然変異体の解析から、CUC1とCUC2という二つの遺伝子が茎の先端の分裂組織の形成に必須なことを明らかにした。また、PLT1とPLT2という遺伝子の働きを調べることで、これらが根端の分裂組織の形成と維持にはたらくことを突き止めた。これらの一連の成果は、植物の成長の原動力となる分裂組織がいかにして形成されるかを明らかにした先駆的な研究として、高く評価されている。
図 A ) シロイヌナズナの芽生えの模式図。
B ) 発芽後2日目(左)と6週目(右)のシロイヌナズナ。
C ) CUC1とCUC2が共に機能を失った突然変異体。茎頂分裂組織が欠失し、地上部の器官をつくることが出来ない。
D ) PLT1とPLT2が共に機能を失った突然変異体(左)と正常な植物体(右)。変異体では根の分裂組織が維持できず、短い根しかできない。
E ) PLT遺伝子の機能を強めた植物体では、からだ全体に根の分裂組織ができる。
関連する論文
- Aida M, Beis D, Heidstra R, Willemsen V, Blilou I, Galinha C, Nussaume L, Noh YS, Amasino R, Scheres B (2004) The PLETHORA genes mediate patterning of the Arabidopsis root stem cell niche. Cell 119:109-120
- Furutani M, Vernoux T, Traas J, Kato T, Tasaka M, Aida M (2004) PIN-FORMED1 and PINOID regulate boundary formation and cotyledon development in Arabidopsis embryogenesis. Development 131:5021-5030
- Aida M, Vernoux T, Furutani M, Traas J, Tasaka M (2002) Roles of PIN-FORMED1 and MONOPTEROS in pattern formation of the apical region of the Arabidopsis embryo. Development 129: 3965-3974
- Aida M, Ishida T, Tasaka M (1999) Shoot apical meristem and cotyledon formation during Arabidopsis: interaction among the CUP-SHAPED COTYLEDON and SHOOT MERISTEMLESS genes. Development 126:1563-1570
- Aida M, Ishida T, Fukaki H, Fujisawa H, Tasaka M (1997) Genes involved in organ separation in Arabidopsis: an analysis of the cup-shaped cotyledon mutant. Plant Cell 9:841-857
(2006年10月11日掲載)