NAIST 奈良先端科学技術大学院大学 バイオサイエンス領域

研究成果の紹介

植物の耐病性反応を誘導する活性酸素生成の分子メカニズムを発見

病原菌が感染すると、植物は素早く活性酸素を作ります。この活性酸素は、病原菌を攻撃するための防御反応を誘導する信号となります。耐病性反応における活性酸素の重要性は、20年以上前から知られていましたが、どのように活性酸素の生成が調節されているかについて、その詳細は不明でした。我々の解析で、耐病性誘導の分子スイッチとして働くイネの低分子量Gタンパク質(OsRac1)が、活性酸素を生成する酵素であるNADPHオキシダーゼと直接相互作用し、その酵素活性を調節して活性酸素の生成量をコントロールしていることを明らかにしました。動物においても、両タンパク質に似たタンパク質が活性酸素生成に関わっていることが報告されていますが、その分子機構は植物と動物で全く異なったものでした。さらに、同時発表の論文(Thao et al. Plant Cell 2007)において、我々はOsRac1の複合体形成がNADPHオキシダーゼの活性化に必要であることも明らかにしました。このように、植物が病原菌に対して抵抗性反応を誘導する仕組みを理解することで、「病気に強い植物」の開発が可能になると考えられます。

尚、本研究は本学バイオサイエンス研究科・生体高分子構造学講座の児嶋長次郎准教授との共同研究により行われました。


図1 OsRac1によるNADPHオキシダーゼの活性化機構

掲載論文

Wong, H. L., Pinontoan, R., Hayashi, K., Tabata, R., Yaeno, T., Hasegawa, K., Kojima, C., Yoshioka, H., Iba, K., Kawasaki, T., Shimamoto, K. (2007) Regulation of Rice NADPH Oxidase by Binding of Rac GTPase to Its N-Terminal Extension. Plant Cell.

(2007年12月27日掲載)

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