NAIST 奈良先端科学技術大学院大学 バイオサイエンス領域

セミナー情報

ゲノム刷り込みによる胚乳発達制御機構の解明:父母の対立と協調

演題 ゲノム刷り込みによる胚乳発達制御機構の解明:父母の対立と協調
講演者 和田 七夕子 博士 (バイオサイエンス領域 花発生分子遺伝学研究室 助教)
使用言語 日本語
日時 2025年2月18日(火曜日) 12:00~12:45
場所 L12会議室
内容

有性生殖では、父母のゲノムを受け継ぐ子が生まれるが、父母のゲノムは等しく機能しているわけではない。ゲノム刷り込みは、父母対立遺伝子の片方が特異的に発現する現象であり、子への養育における父母間のコンフリクトに起因するとされる。この現象は、哺乳類および顕花植物に見られるが、独立に獲得され、収斂進化により類似の機能・機構を有するに至ったと考えられている。しかしながら、植物のゲノム刷り込み機構は未解明な部分が多く、進化の解明には至っていない。モデル植物であるシロイヌナズナにおいて、1998年に強力な母方インプリント遺伝子MEAが同定され、コンフリクト説および実験結果より、MEAに拮抗する父方インプリント遺伝子の存在が予想されていた。私達は、独自のスクリーニングにより新たな父方インプリント遺伝子を同定し、父母間のコンフリクトを実証する初の例を示した。一方で、その後の解析では、対立だけでなく協調的な作用も見出しており、これらの父母インプリント遺伝子のバランスが釣り合うことが、胚乳発達の進行に重要である可能性が示唆された。胚乳発達不全は、種間交雑による致死の原因であるが、シロイヌナズナ野生集団においてもこのバランスの多様性が存在する可能性も得ている。アブラナ科植物の種子は油脂源として注目されるため、胚乳を通した種子サイズ操作についての応用的研究も進めている。

問合せ先 遺伝子発現制御
別所 康全 (ybessho@bs.naist.jp)

セミナー情報一覧へ