NAIST 奈良先端科学技術大学院大学 バイオサイエンス領域

セミナー情報

PRC2によるトランスポゾン発現抑制機構の発見

演題 PRC2によるトランスポゾン発現抑制機構の発見
講演者 久永 哲也 博士(Berger lab, Gregor Mendel Institute, Austria)
使用言語 日本語
日時 2022年3月31日(木曜日) 16:00~17:00
場所 オンライン開催
内容

トランスポゾンとは可動性のDNA配列であり、その発現および移動はゲノム不安定性をもたらすため、通常トランスポゾンの発現は抑制されている。哺乳類および被子植物において、ほとんどのトランスポゾンはDNAのメチル化およびヒストンH3K9のメチル化(H3K9me2/3)の蓄積によりヘテロクロマチン化され、その発現が抑制されている。このH3K9me2/3マークの蓄積は、発現抑制されたトランスポゾンにみられる一般的な特徴と考えられてきたが、最近の比較的新しいモデル生物を用いたゲノミクス解析から、コケ植物や紅藻類においては、H3K9me2/3ではなくH3K27me3マークが一部のトランスポゾンに蓄積していることが明らかとなってきた。これらトランスポゾン上に存在するH3K27me3マークが実際にトランスポゾンの発現を抑制しているかを検証するために、我々はコケ植物のモデル、ゼニゴケ、および紅藻類のモデル、シゾンを用いH3K27me3マークの書き込みを担うPRC2複合体の機能欠損変異体を作出した。トランスクリプトーム解析の結果、両モデルにおいてPRC2変異体では一部のトランスポゾンの発現量上昇が観察された。さらに、これら発現量上昇が確認されたトランスポゾンのほとんどは、野生型においてH3K27me3マークが蓄積していた。以上の結果は、これらの種においてPRC2複合体がトランスポゾンの発現抑制に機能していることを示している。また、このPRC2複合体の機能がコケ植物と紅藻類に共通してみられることから、PRC2複合体の祖先的な機能はトランスポゾンの発現抑制であったのかもしれない。

問合せ先 植物発生シグナル研究室
中島 敬二 (k-nakaji@bs.naist.jp)

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