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コヒーシンの脱アセチル化修飾とその意義

演題 コヒーシンの脱アセチル化修飾とその意義
講演者 白髭 克彦 教授 (東京大学 分子細胞生物研究所)
使用言語 日本語
日時 2010年10月28日(木曜日) 17:00~
場所 バイオサイエンス研究科 大講義室
内容

コヒーシンは、真核生物間で高度に保存された4つのタンパク質(Smc1, Smc3, Rad21, SA1)からなる複合体で、リング状の特徴的な構造をとり、DNA複製後の姉妹染色分体を束ねる(コヒージョン形成)という細胞の増殖に必須な役割を担っている。一方で、ヒト、マウスでは、染色体上でインシュレーター因子CTCFと共局在し、転写制御に機能している。最近、コヒーシンのサブユニットSMC3のアセチル化がコヒージョン形成に必須であることが明らかにされた。ヒトではアセチル化転移酵素は二種類(Esco1とEsco2)知られており、Esco2は重度の発生分化異常を伴う疾患であるロバーツ症候群の原因遺伝子である。したがって、コヒーシンのアセチル化はコヒージョン形成のみならず転写制御にも重要な役割を担っていると考えられる。

そこで、我々は、コヒーシンのアセチル化修飾の生理的意義を明らかにするためにアセチル化SMC3に対する特異的なモノクローナル抗体を作製し、その動態解析を行っている。まず、同調したHeLa細胞を用いて、細胞周期でのSMC3のアセチル化を観察した。その結果、SMC3は、細胞周期を通じてアセチル化され、このアセチル化レベルは、S期後半に高くなることが明らかとなった。さらに、RNAiによるESCO1とESCO2のノックダウン実験を行ったところ、ESCO1は、細胞周期を通じて働いていること、ESCO2はS期にのみSMC3をアセチル化していることが明らかとなった。興味深いことにSMC3のアセチル化は、細胞周期で増減が認められ、分裂期においてアセチル化が消去されることが示唆された。このことから、SMC3を脱アセチル化する酵素の存在が考えられたため、既知のHDACファミリー、SIRTファミリー全てについて、RNAiによりSmc3の脱アセチル化酵素を探索した。その結果、Class I Hdacファミリーに属するHDAC8を唯一のSmc3脱アセチル化酵素として同定できた。HDAC8RNAiやHDAC8阻害剤で細胞を処理すると、SMC3のアセチル化の明らかな亢進が認められ、コヒージョン欠損が誘導された。さらに、原因遺伝子が特定できていないCdLS(コヒーシン関連因子の変異が原因となって起こるとされる重度の発生分化異常を伴う疾患)患者のスクリーニングから、Hdac8が新たなCdLS原因遺伝子として特定できたことから、コヒーシンの脱アセチル化も転写制御に重要な役割を演じていることが明らかとなった。

現在、これらアセチル化酵素、脱アセチル化酵素の阻害により染色体領域特異的SMC3のアセチル化の亢進あるいは阻害が誘導されるか否か、ChIP-seq法により検討しているので、その結果も併せて報告する。

問合せ先 システム細胞学講座
小笠原 直毅 (nogasawa@bs.naist.jp)

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