NAIST 奈良先端科学技術大学院大学 バイオサイエンス領域

セミナー情報

微生物ゲノム合成のインパクト

演題 微生物ゲノム合成のインパクト
講演者 板谷 光泰 教授(慶應義塾大学先端生命科学研究所)
使用言語 日本語
日時 2013年7月2日(火曜日) 15:00~16:30
場所 L12会議室
内容
 生物は全てDNA(ゲノム)を保有している。ゲノムは細胞中で最大の分子量を有する生体高分子で、微生物の場合は数百から数千の遺伝子で構成される。ゲノム研究は、伝統的な遺伝学的研究、遺伝子をクローニングして調べる分子生物学を経て、今やゲノムをデザインして合成する課題が加わり大きく変遷した。
 長鎖高分子DNA であるゲノムは傷つきやすく試験管(水溶液)での操作を経るクローニング技術は困難であった。地球型生物の最小ゲノムであるMycoplasma ゲノム(585 kb、480 遺伝子)でさえも、大腸菌プラスミドを利用する遺伝子操作系では扱えずゲノムDNA はそのゲノムを持つ細胞でしか合成できなかった。この状況はしかしながら特殊なクローニング宿主、枯草菌(1) と酵母(2)、が開発されることで大きなブレイクがもたらされた。酵母を宿主として利用する合成ゲノムは2007~2010 年に米国のVenter 研究所から報告され(2)、鋳型のDNA がなくても設計どおりのゲノムが有機合成の手法で作れるようになり、他方、枯草菌を宿主として開発した我々のグループは、大規模ゲノムクローニング用の汎用宿主として利用する技術を開発し2005 年に完成させた(1)。
 本セミナーでは、微生物ゲノム工学の時代からゲノム合成時代への転換期を概観するとともに、今後のゲノムデザインまでの見通しについてまとめてみたい(3)。このような合成生物学的なアプローチが、逆に既存ゲノムの理解を深化させる点も改めて喚起したいが、我々の現在の知識と経験からはゲノムの塩基配列を1から書き下ろすのは大変困難であり、実際にゲノム配列設計→合成→細胞への導入→有用細胞の再設計、のような試行錯誤の時代が続くだろう。
【参考文献】
(1) M.Itaya, et al.,: PNAS., 102, 15971 (2005).
(2) D.Gibson, et al.: Science, 329, 52 (2010).
(3) 板谷光泰 in‘ 合成生物学’, 浅島誠・他編、シリーズ現代生物科学入門9、第2 章「ゲノム構造の再編成」、pp35-65 岩波書店 (2010)
問合せ先 システム微生物学
森 浩禎 (hmori@gtc.naist.jp)

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