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奈良先端科学技術大学院大学 バイオサイエンス領域

Research 研究成果の紹介

マウス胚・細胞の生死を分ける“生存スイッチ”の一端を解明
タンパク質 Zbtb38 が XIAP の発現を高め、細胞死(アポトーシス)にブレーキをかける仕組みを解明
~胚発生や細胞分化、がん細胞の生存に関わる新たな仕組みを発見~

マウス胚・細胞の生死を分ける“生存スイッチ”の一端を解明
タンパク質 Zbtb38 が XIAP の発現を高め、細胞死(アポトーシス)にブレーキをかける仕組みを解明
~胚発生や細胞分化、がん細胞の生存に関わる新たな仕組みを発見~

【概要】
 奈良先端科学技術大学院大学(学長:塩﨑一裕)先端科学技術研究科バイオサイエンス領域の松田永照博士、重岡稔章助教、石田靖雅准教授らの研究チームは、マウス胚およびマウス細胞を用いた研究を行いました。その結果、遺伝子の発現を調節するタンパク質Zbtb38※1は、XIAP※2遺伝子の発現を高めることで、アポトーシス※3に“ブレーキ”をかけていることが明らかになりました。Zbtb38が低下するとアポトーシスは増加しましたが、XIAPを過剰に発現させることで、この増加は抑制されました。さらに、Zbtb38がDNAに結合することによりXIAP遺伝子の転写を活性化することも示されました。これらの結果から、Zbtb38はXIAPの発現制御を通じてアポトーシスを抑制していると考えられます。
 本成果は、発生や分化における細胞生存の仕組みの理解を深め、がん細胞の生存制御を考える手がかりになることが期待されます。
本研究成果は、国際学術誌「Journal of Molecular Cell Biology」に2026年7月3日(金)に公開されました(DOI:10.1093/jmcb/mjag011)。


【背景と目的】
 私たちの体には、古くなった細胞や異常な細胞を自ら壊して排除する「アポトーシス」という仕組みがあります。これは発生や組織の維持に不可欠ですが、過剰に起これば発生異常や組織障害につながり、逆に起こりにくくなると、異常な細胞(がん細胞など)が生き残りやすくなります。
 そのため、細胞が「生き残るか、死ぬか」をどのように調節しているのかを分子レベルで理解することは重要です。本研究では、遺伝子の発現を調節するタンパク質Zbtb38に注目しました。私たちの先行研究では、さまざまな細胞でZbtb38の発現を低下させると、アポトーシスが増えることが分かっていました。そこで本研究では、幅広い解析によりZbtb38の標的となる分子を同定するとともに、Zbtb38がその分子の発現をどのように制御しているのかを明らかにすることを目的としました。


【研究の内容】
 細胞内には、アポトーシスを進める“実行役”としてカスパーゼ3※4が存在します。本研究では、マウスの胚発生、未分化細胞から分化細胞への移行過程、さらにがん細胞や分化細胞を用いた解析により、Zbtb38が細胞生存の制御に重要な役割を担うことを明らかにしました。
 まず、Zbtb38によって発現が調節される分子を幅広く解析した結果、カスパーゼ3を直接抑制するタンパク質XIAPを見いだしました。また、Zbtb38はXIAP遺伝子の特定のDNA領域に結合し、その発現を高めることが示されました。Zbtb38の発現が高い状態では、XIAPの発現が高まり、カスパーゼ3が抑えられることで、アポトーシスは起こりにくくなります。逆に、Zbtb38の発現が低下するとXIAPが十分に作られなくなり、カスパーゼ3が活性化してアポトーシスが増加します。さらに、公開データベースの解析から、さまざまながん組織やがん細胞株において、Zbtb38の発現とXIAPの発現には強い相関がみられました。
 これらの結果から、Zbtb38–XIAP経路が、胚発生や細胞分化、がん細胞の生存など、さまざまな場面で細胞生存とアポトーシスのバランス制御に重要な役割を果たす可能性が示されました。
 

【今後の展開】
 本成果はマウス胚およびマウス細胞を用いた基礎研究によるものですが、Zbtb38–XIAP 経路の理解は、今後、がん細胞に対する新たな治療戦略の検討や、病気によって失われやすい重要な細胞を保護する方法の開発、さらには細胞分化に伴う生存制御の解明につながることが期待されます。


【用語解説】
※1 Zbtb38:CIBZ とも呼ばれ、松田永照博士らが発見した転写制御因子。遺伝子の発現を調節する。
※2 XIAP:カスパーゼ 3 などの働きを直接阻害することでアポトーシスを抑制するタンパク質。胚発生や細胞分化、がん進行に重要な役割を果たす。
※3 アポトーシス(細胞死):細胞が自らのプログラムに従って死ぬ仕組み。発生や組織維持に必要。
※4 カスパーゼ 3:アポトーシスの実行に中心的な役割を担う酵素。


【掲載論文】
タイトル:Zbtb38 transcriptionally activates XIAP to regulate apoptosis in development and cancer
著者:Toshiaki Shigeoka, Hiroyuki Nagaoka, Nunuk Aries Nurulita, Shogo Tada, Yasumasa Bessho,
Yasumasa Ishida, Eishou Matsuda
掲載誌:Journal of Molecular Cell Biology DOI:10.1093/jmcb/mjag011

【機能ゲノム医学研究室】

研究室紹介ページ:https://bsw3.naist.jp/courses/courses211.html
研究室ホームページ:https://bsw3.naist.jp/ishida/

(2026年07月08日掲載)

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