NAIST 奈良先端科学技術大学院大学 バイオサイエンス領域

研究成果の紹介

バイオサイエンス研究科ストレス微生物科学研究室の城山真恵加さん(博士前期課程2年)が第9回トランスポーター研究会年会における優秀発表賞を受賞

 バイオサイエンス研究科ストレス微生物科学研究室の城山真恵加さん(博士前期課程2年)が第9回トランスポーター研究会年会における優秀発表賞を受賞しました。

受賞のコメント

 この度、第9回トランスポーター研究会年会において優秀発表賞を受賞することができ、大変光栄に思います。この賞を頂けたのも、高木博史教授、大津厳生助教をはじめ、これまで苦楽を共に研究を進めて下さった、ポスドクの森ヶ崎進博士、河野祐介博士、技術補助員の井田慶子さん、吉野みほ子さん、大学院生のナッタさん(現: BIOTEC)、仲谷豪さん(現:長瀬産業)、佐々木翠さん(現:日本食研)、鈴木茉里奈さん(現:資生堂)、玉越愛さん(現:日本アルシー)、高橋砂予さん、舟橋依里さん、加知卓磨君、鶴岡愛さん、ありがとうございます。また研究室の皆様のご助言にも深く感謝しております。今回の受賞を励みに、今後さらに、研究を発展していけるよう精進していきたいと思います。

トランスポーター研究会年会のホームページ
http://jtra.jimdo.com/

受賞時の発表内容

『大腸菌における新規チオ硫酸イオンインポーターYeeEの機能解析』

 大腸菌は、環境中に硫酸イオン(SO42-)とチオ硫酸イオン(S2O32-)が同時に存在すると、チオ硫酸イオンから、生育に必須のシステインを合成する「チオ硫酸リプレッション,TSR」を備えていることを私たちのグループは見出している1)。しかし、そのメカニズムは不明である。そこで、炭素原や窒素源と同様に、TSRが転写レベルによるトランスポーターの制御ではないかと考え、大腸菌における2つのチオ硫酸イオントランスポーターCysPTWAとYeeEDに着目し、TSRとの関連性について解析を行った。
 チオ硫酸イオンと硫酸イオンの取り込み能を欠損したcysA欠損株、チオ硫酸イオンからシステインの前駆体であるS-スルホシステインを合成できないcysM欠損を導入したcysAcysM二重欠損株、さらに硫化物イオンからシステインを合成できないcysK欠損を導入したcysAcysK二重欠損株を用いて、S2O32-単一培地で生育実験を行った結果、cysA欠損株とcysAcysM二重欠損株は、良好に生育できることが判明した。一方、cysAcysK二重欠損株は生育できない。このことは、CysPTWA以外のS2O32-インポーターの存在を示すと共に、硫酸経路上に存在する亜硫酸や硫化物イオンへとバイパスする新規の経路を担う第三のシステイン合成酵素、チオ硫酸硫黄転移酵素の存在を強く示唆する2)。そこで、ゲノムワイドにチオ硫酸硫黄転移酵素を探索した結果、機能未知のyeeD遺伝子を見出した。また、その上流に9回膜貫通領域を有する内膜タンパク質YeeEをコードするyeeE遺伝子が存在し、これら遺伝子はオペロンを形成していると示唆された。YeeEは、環境中からチオ硫酸イオンを細胞内に取り込み、YeeDにより速やかに亜硫酸イオンと硫化物イオンに変換する。この変換によりTSRが解除され、これらの無機硫黄は硫酸経路を介して、システインを合成できると結論した1)。 

関連する資料

  1. 硫黄同化の進化の果ては「ごめんなさい」, 大津厳生、河野祐介、高橋砂予、城山真恵加、舟橋依里、高木博史
    実験医学増刊号「代謝研究の最前線」, 2014 (印刷中)
  2. L-システイン生産能が高められた腸内細菌科に属する細菌, 大津厳生、河野祐介、高橋砂予、舟橋依里、城山真恵加, 特願2013-183237

(2014年06月18日掲載)

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