池内准教授

池内 桃子 特任准教授

植物再生学

ご自身の研究内容やその面白さについて教えてください。

物の再生現象について研究しています。植物は挿し木や組織培養で簡単に増やせるのが当たり前だと思っている人も多いかもしれませんが、切り取られた器官の一部から個体をまるごと作れるというのは、私たち哺乳動物には到底真似できない驚きの能力ですよね。また細胞レベルでこの現象を捉えると、一旦分化した細胞が運命を劇的に転換して新たな器官を生み出しています。このように、植物細胞が本来持っている高い分化可塑性が如実に現れる現象として、再生現象に注目しています。意外なことに、再生現象のプロセスで何が起こっているのか、再生しやすさがどう決まっているのか、といった重要な多くの課題が未解決でチャレンジしがいがあります。

研究現場の苦労や楽しみについて教えてください。

研究テーマには難所があり、いくら努力してもどうにもならない場合も往々にしてありますし、いつ・どうすれば難所を越えられるか見通せないのが研究の難しさです。私は学生時代に何年も難所を超えられず苦しみました。自分自身は苦労した経験から沢山のことを学びましたが、研究室を運営する立場になってからはラボメンバーがなるべく苦労せずに楽しく順調に研究できるよう工夫して指導しています。難しい研究計画にはバックアッププランを考えたり、ハードワークが必要な局面では分担して進めるなど、俯瞰的立場からサポートできることは多々ありますので、それが現在の私の役割です。

研究の楽しさは、挙げきれないほどたくさんあります。生命現象を観察して自分なりの切り口や作業仮説を立てて実験を組み立て、仮説を検証するための実験を行う研究活動には、まさに知力と体力を総動員して挑戦しているという実感が得られ、大きなやりがいを感じます。仮説が裏付けられる結果が得られても嬉しいですが、仮説通りの結果が得られないときこそ、ラボメンバーや共同研究者と議論しながら新しい仮説を考え出すので、むしろ新たな展開が拓けるチャンスとも言えます。個人的には文章を書くのが好きなので研究成果をまとめて論文を書くのも大好きですし、研究者には個性豊かな方々が多くそういった方々と一緒に仕事できることも密かに愉しんでいます。研究所に長く在籍していたのですが、大学に移ってきてからは学生と一緒に研究する楽しさも発見しました。初めて会ったときには想像もできなかったような成長を遂げる学生さんも多く、嬉しい驚きです。

期待される成果や社会的意義について教えてください。

組織培養技術を用いた器官再生系はゲノム編集作物や遺伝子組換え作物の作出に欠かせないプロセスですが、有用作物品種の中には再生効率が悪かったり培養に使える組織が限られていて使いづらいものも多く、技術的なボトルネックになっています。再生しやすい作物を作ることができれば、ゲノム編集など最先端の技術を様々な作物に応用できるようになりますので、植物再生学分野ではそれを目指して世界中の研究者がしのぎを削っています。

これから受験する学生へ一言応援メッセージ

私は2022年度に着任したばかりの新入りですが、奈良先端大は世界トップレベルの研究活動と、組織立ったカリキュラムに基づくきめ細やかな学生教育が両立した、大学院生にとって素晴らしい環境だと感じています。多様なテーマとラボ文化を持つ多くの研究室がアクティブに研究活動を展開していますので、きっと一人ひとりに合った研究室が見つかるはずですよ。是非ここで私達と一緒に研究しましょう!

研究室を志望するにあたり、勉強をする上で、おすすめのサイト、本、総説などを教えてください。

シロイヌナズナを使って植物科学の研究をする大学院生の日常を覗いてみたい方には、三浦しをん作「愛なき世界」がオススメです。でも現実の方がもっと皆さんプライベートも満喫していますのでご安心下さい。

リフレッシュ方法は何ですか?

息子と遊んだりハイキングすることです。最近奈良に引っ越してきたので、仏像めぐりも楽しんでいます。