秋山准教授

秋山 昌広 准教授

原核生物分子遺伝学

ご自身の研究内容やその面白さについて教えてください。

DNA複製装置の分子レベルの仕組みは、基礎生物学の教科書で解説される程に良く分かっています。一方、染色体上では、複製装置と転写装置の衝突などによる複製阻害がゲノムを不安定にする主要な要因であるにも拘わらず、染色体上での複製装置の動態は想像の域を出ていません。私たちは、染色体複製の基本原理、および、その異常によって生じる突然変異やゲノム不安定性について微生物を用いて研究しています。微生物では、転写装置の移動速度を自動車の徐行速度と仮定すると、複製装置は新幹線のぞみ並の速度で転写装置と同じ染色体DNA上を動いていることになります。しかし、微生物のゲノムは、複製と転写の衝突で大惨事(突然変異やゲノム不安定性)を起こして遺伝情報を失うことなく、正確に複製されます。それはとても不思議です。また、DNA合成の基質であるチミンの欠乏によって、DNA複製は論理的に染色体上のどこでも阻害されますが、チミン欠乏では特定のゲノム領域が強いゲノム不安定性を示します。そのゲノム不安定性のメカニズムも未だに謎です。

研究現場の苦労や楽しみについて教えてください。

DNA複製や突然変異の研究では、顕微鏡写真などの目で見て分かるデータがほとんど無いため、視覚的なイメージが湧きにくく、研究内容を伝えるときに言葉での説明力が追いつかない難しさを感じます。しかし、次世代シークエンサーの登場によって、DNA複製や突然変異をゲノムレベルで解析できる楽しい時代になってきました。

期待される成果や社会的意義について教えてください。

DNA合成の基質であるチミンの欠乏によってDNA複製が阻害されたときに生じる細胞死(チミン飢餓死)は、今から60年以上前に発見されましたが、未だにそのメカニズムはミステリーです。医療現場で長年に渡って広範に使用されている抗菌剤のトリメトプリムや、抗がん剤の5-FU(フルオロウラシル)は、このチミン飢餓死を起こす薬剤です。私たちの染色体複製の研究で、大腸菌のゲノムはチミンが不足すると特定のゲノム領域で複製を一時的に止めるようにプログラムされており、その領域はチミン飢餓死に特異的なゲノム不安定性部位と一致することを発見しました。このプログラム複製停止の研究は、チミン飢餓死のメカニズム解明に繋がると期待されます。

これから受験する学生へ一言応援メッセージ

勇往邁進。

研究室を志望するにあたり、勉強をする上で、おすすめのサイト、本、総説などを教えてください。
リフレッシュ方法は何ですか?

寝転がってサブスクで映画を見ることです。年間60本くらい見ます。