研究成果

研究成果

加藤晃助教が、日本植物細胞分子生物学会2009年度「技術賞」を受賞しました

バイオサイエンス研究科・植物代謝調節学講座の加藤晃助教が、日本植物細胞分子生物学会2009年度「技術賞」を受賞し、7月30日(木)午後から、日本大学生物資源科学部本館大講堂で表彰式が行われました。

日本植物細胞分子生物学会「技術賞」は、植物バイオテクノロジーの分野で実用化された、または実用化間近の顕著な研究成果に対して贈られる賞です。

受賞コメント

我々は植物に導入した有用遺伝子を安定に高発現させるために研究開発を行なってきました。この受賞「外来遺伝子を高発現させる新規ベクターの開発」は我々のこれまでの研究成果が評価されたものであり、研究室のスタッフ、学生、共同研究者の方々に深く感謝いたします。また、工学系の研究者にとって「技術賞」は大変名誉な賞であり、今後も研究開発をさらに進め、植物バイオテクノロジー分野の発展のために尽力していきたと思っています。

受賞内容

分子育種を活用して有用遺伝子組換え植物や培養細胞を作出する試みが盛んに行われていますが、個体間で導入した遺伝子の発現がバラツクことや目的であるタンパク質が高蓄積しないことは、実用化への大きな障害となっていました。この中で、個体間での発現のバラツキについては、完全なシングルコピー導入個体を取得することで回避できることが示されていますが、目的タンパク質の高蓄積に関しては、我々が開発した以下の2つの要素技術(5’UTRの改良、ターミネーターの改良)により大きく改善できるものと考えられます。

翻訳過程は遺伝子発現の重要なステップの一つで、5’UTRの配列が翻訳効率に重要な役割を果たしています。我々は、mRNAあたりの翻訳効率の高い5’UTR(翻訳エンハンサー)の探索を行なった結果、タバコやシロイヌナズナから単離したアルコールデヒドロゲナーゼ遺伝子の 5’UTR(Nt/AtADH-5'UTR)が翻訳エンハンサーとして機能することを明らかとしました(一過性発現実験で約100倍、安定形質転換体で約 40倍の効果)。また、単子葉で機能する翻訳エンハンサー(OsADH-5’UTR)も単離しています。5’UTRの中で開始コドン近傍配列も翻訳効率に影響する要因の一つです。開始コドンから-3,-2,-1位に位置する塩基を全ての組合せで試験し、レポーター遺伝子の発現量を調べたところ、配列の違いにより406倍程度の発現量の差があることが明らかとなりました。この近傍配列は翻訳エンハンサーとは独立して翻訳効率に影響することから、両者を組み合わせることで更なる高発現化が期待できます。

転写終結領域(ターミネーター)も遺伝子発現に重要です。この領域は単に転写終結だけでなく、3’末端プロセッシングとそれに伴うRNAポリメラーゼのDNAからの解離に関わるため、もし不完全なターミネーターを用いた場合には、導入した遺伝子の正味の発現量の低下だけでなく、リードスルーにより下流遺伝子の発現量の低下(転写干渉)をもたらす危険性があります。NOS-Tは現在広く用いられているターミネーターですが、NOS-Tの場合、顕著な転写干渉が起きてしまいます。我々は、NOS-Tに代わる新規ターミネーターを探索した結果、シロイヌナズナHSP遺伝子由来のものが非常に効率の良いことを見いだしました。このHSP-Tを用いた場合、NOS-Tと比較して導入した遺伝子の正味の発現量が数倍増加し(mRNAあたりのタンパク質の蓄積量)、加えて「転写干渉」の抑制が認めらます。

これら2つの要素(翻訳エンハンサー、転写を効率的に終結させる新規ターミネーター)は、有用遺伝子組換え植物を作出する上で、その活用が大いに期待され、実際にこれら要素を発現ベクターに付加することで導入遺伝子の発現を100倍以上増加させることができます。

関連する論文
  1. 「The 5'-untranslated region of the tobacco alcohol dehydrogenase gene functions as an effective translational enhancer in plant」 J. Biosci. Bioeng., 98 (1), 1-8 (2004)
  2. 「Expression of Randomly Integrated Single Complete Copy Transgenes Does not Vary in Arabidopsis thaliana」 Plant Cell physiol., 46 (3), 438-444 (2005)
  3. 「Improved translation efficiency in chrysanthemum and torenia with a translational enhancer derived from the tobacco alcohol dehydrogenase gene」 Plant Biotechnology, 25 (1), 69-75 (2008)
  4. 「The 5’-Untranslated Region of the Oryza sativa Alcohol Dehydrogenase Gene Functions as a Translational Enhancer in Monocotyledonous Plant Cells」 J. Biosci. Bioeng.,105 (3), 300-302 (2008)
  5. 「Effect of the Sequence Context of the AUG Initiation Codon on the Rate of Translation in Dicotyledonous and Monocotyledonous Plant Cells」 J. Biosci. Bioeng., in press (2009)

(2009年08月28日掲載)

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