研究成果

研究成果

胎盤の発達に小胞体ストレスセンサーIRE1αが必須な働きをしていることを解明

本研究科動物細胞工学講座(河野研究室)の研究内容が米国アカデミー紀要(PNAS)9月29日号に掲載されました。

掲載論文

Iwawaki, T., Akai, R., Yamanaka, S., and Kohno, K. Function of IRE1alpha in the placenta is essential for placental development and embryonic viability. Proc Natl Acad Sci USA 106, 16657-16662 (2009)

哺乳動物の小胞体ストレスセンサーIRE1αは、マウスの発生に必須な遺伝子であり、IRE1α を遺伝子破壊したマウスを作製すると胎令12.5日程度で様々な発達障害を起こし死亡してしまうことが報告されているが、その詳細な理由については明らかとなってはいなかった。今回、我々はマウス個体レベルでの小胞体ストレスを可視化できる従来型ERAI-GFPマウスを更に改良した、ERAI- Luc(ルシフェラーゼを利用したもの)マウスを作製し、マウス発生過程で起こる小胞体ストレス経路の活性化を追跡したところ、マウスの胎児ではなく胎盤で非常に強く活性化していることを見いだした。IRE1α遺伝子破壊マウスを作製し胎盤の発達を調べた所、胎盤サイズの減少、血管系の未発達、胎児への栄養輸送能の低下が起きているだけでなく、血管内皮成長因子(VEGF-A)の発現が約3分の1程度まで激減していることがわかりました。このことは IRE1αの遺伝子欠損により胎盤部でのVEGF-Aの発現が低下し胎盤部の血管系の未発達により胎児の発生が抑えられたことを示唆しています。そこで胎盤部のみでIRE1α遺伝子を発現し、他の胎児の部分ではすべてIRE1αが欠失するIRE1αconditional KOマウスを作製しその効果を調べた所、この条件下では胎児が正常に生まれてくることが明らかとなりました。このことより、IRE1αはマウスの胎盤の発達に必須な役割をしており、特に胎盤の血管形成に重要な役割をしていることが示唆されました。

IRE1α遺伝子を欠失したマウスが成体のマウスまで成長することは驚くべきことですが、このマウスは全く正常なのか、あるいはどのような異常を起こすのかは大変興味があり現在調べているところです。また、XBP1の遺伝子破壊マウスも同様に胎生致死を示しますが、IRE1αKOマウスと異なり VEGF-Aの低下は観察されておらず、IRE1-XBP1経路とは別の経路がある可能性を示しています。

なおこの研究は、理化学研究所の岩脇隆夫研究員との共同研究です。


(図) ERAI-Lucマウスの胎児(左)と胎盤(右)。胎盤でIRE1-XBP1経路が活性化していることがわかる。

(2010年01月12日掲載)

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