NAIST 奈良先端科学技術大学院大学 バイオサイエンス領域

研究成果の紹介

バイオサイエンス研究科植物分子遺伝学研究室の鷲田治彦博士研究員が第121回講演会日本育種学会優秀発表賞を受賞

 バイオサイエンス研究科植物分子遺伝学研究室の鷲田治彦博士研究員が、第121回講演会日本育種学会優秀発表賞を受賞しました。本賞は、若手研究者の研究を奨励する目的で、優れた研究発表を選び日本育種学会優秀発表賞として表彰するものです。学会長の任命による投票員によって選定されます。

受賞コメント

 2012年日本育種学会春季大会(第121回講演会)における優秀発表賞を頂き大変光栄に思っております。島本功教授、辻寛之助教をはじめ、共同研究の皆様、研究室のポスドク、学生、技術職員の方々のご助言、ご協力のおかげであり深く感謝しております。また、本研究を滞りなく進めることができたのも、奈良先端大の素晴らしい研究環境と支援体制であり、事務の方々をはじめサポートスタッフにも感謝したいと思います。本受賞を糧として、最終目標であるフロリゲンを用いた開花の人為的制御の実現に向けて、さらに研究を発展させていきたいと思っております。


受賞時の発表内容

 植物が花を咲かせるための決定的な分子であるフロリゲン、イネHd3aタンパク質を膜透過ペプチドを利用して直接、イネの茎頂の細胞に導入し、下流で働く花芽形成遺伝子を活性化させることに成功しました。

 フロリゲンの実体であるHd3aタンパク質は葉で合成された後、実際に花のつく茎の先端(茎頂)まで移動して花芽形成を開始させます。通常では、タンパク質は細胞膜をそのまま透過することは出来ませんが、私達は膜透過ペプチドを利用することで、Hd3aタンパク質を植物細胞に人為的に直接導入することに成功しました。蛍光ラベルされたHd3aタンパク質は、直接導入後、茎頂の細胞内で核や細胞質で観察することが出来ました。さらに花芽形成遺伝子であるOsMADS15遺伝子の活性化を確認することが出来ました。また、4年以上花が咲いていないイネ形質転換体においても、OsMADS15遺伝子は活性化されました。
これらの結果から、本技術を発展、改良することで、近い将来、フロリゲンタンパク質を農薬や植物調整剤のように用い、開花を制御する可能性が開かれたと考えています。

(2012年05月18日掲載)

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