NAIST 奈良先端科学技術大学院大学 バイオサイエンス領域

研究成果の紹介

根毛が細長く伸び続ける機構を発見

植物の根には、細くて長い毛、根毛がびっしりと生えている(左図)。根毛は根のひとつの表皮細胞から生じ、土中からの水分や、それに溶け込む無機栄養分を吸収する大事な役割をもつ。かたい細胞壁を持つ植物細胞が、どのようにして根毛のような細長い成長をし続けられるのだろうか?

この疑問を明らかにするため、我々は、シロイヌナズナのRHD2(ROOT HAIR DEFECTIVE2)タンパク質に着目した。RHD2は活性酸素を作るNADPHオキシダーゼ酵素であり、根毛の成長に関わることが知られていた。さらに、活性酸素は植物の細胞壁をゆるめたり、細胞内へのカルシウムイオンの流入を促したりすることが、in vitroで示されていた。今回の研究により、カルシウムイオンが今度はRHD2タンパク質の活性酸素産生能を上げることが新たに分かった。このことから、RHD2、活性酸素、およびカルシウムイオンが、正のフィードバック制御を樹立していることが示された。また、RHD2が成長中の根毛の先端部に蓄積し続けることを発見し、根毛の先端部のみでこの正のフィードバック制御機構が行われていることを示した(右図)。この局所的なフィードバック制御が、根毛を一方向に細長く伸ばせ続けるためのシステムであることが予想される。


図 (左)シロイヌナズナの3日目の芽生え。根に根毛がびっしりと生えている。(右)根毛の先端で行われている正のフィードバック制御機構。この機構により、根毛は一方向に細長く成長し続けられると考えられる。

掲載論文

Takeda, S., Gapper, C., Kaya, H., Bell, E., Kuchitsu, K. and Dolan, L. (2008) Local Positive Feedback Regulation Determines Cell Shape in Root Hair Cells. Science vol. 319, 1241-1244, February 2008

(2008年03月01日掲載)

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