研究室・教員

膜分子複合機能学 (塚崎研究室)

塚﨑智也准教授の顔写真
准教授
塚﨑 智也
助教
田中 良樹
Email
{ ttsukaza, yotanaka }@bs.naist.jp
研究室HP
http://bsw3.naist.jp/tsukazaki/

研究・教育の概要

2013年4月にスタートした研究室です。生体膜を舞台とした基本的な生命現象には様々な膜蛋白質が関わっています。これらが織りなすダイナミックな構造変化に起因する分子メカニズムの解明に向け,新たな研究手法を組み合わせた構造生物学的解析による基礎研究・教育を行います。

主な研究テーマ

Sec膜蛋白質複合体の作動機構を原子レベルで可視化

Sec膜蛋白質複合体は、細菌の細胞質膜や真核生物の小胞体膜に存在し、新規に合成された蛋白質の膜透過に必要な装置です(図1)。蛋白質の膜透過の仕組みについては、後にノーベル賞の受賞に結びついた、1975年にブローベルらが発表した「シグナル仮説」をはじめ、現在に至るまで数多くの研究結果が発表されています。細菌では,SecA ATPase, SecYEG, SecDFからなる巨大な複合体が、細胞質で合成されたばかりの蛋白質をペリプラズム空間へと輸送します(図2)。この機構は細菌にとって必須であることから、Sec蛋白質を標的とした新しいタイプの抗生物質の研究も進められています。当研究室の塚崎らは、すべてのSec因子の構造をX線結晶構造解析により決定し、構造情報に基づく機能解析を進め、蛋白質膜透過反応時に起こる構造変化を明らかにしてきました。今後は研究を発展させ、Sec膜蛋白質複合体の構造を原子レベルで解明し、その構造情報に基づき新たなモデルの提唱を行います。また、蛋白質膜透過反応の完全理解の為には、時間に依存した反応を見る必要があります。蛍光などを利用した新しい一分子観察の技術を用い、時間に依存した構造変化を詳細に解析する予定です。本研究では、複合体の構造情報と新たな手法を用いた一分子観察のデータを統合し、生命必須の蛋白質膜透過反応を動画として可視化するのが目標です。

イオン輸送体などの緻密なメカニズムの解明

細胞は生体膜によって、外界と細胞内や細胞内小器官を隔てています。膜蛋白質の働きにより、細胞は薬剤などの物質の取り込み・排出、情報伝達、エネルギー合成等を行っています。このような膜蛋白質の分子機構の詳細な解明には立体構造が不可欠です。これまでに田中らは、いくつかの膜輸送体(図3 輸送体の模式図)に着目し、その構造解析を進めてきました。輸送体が適切に機能するメカニズムの解明には、「その機能の本体である輸送の機構」「輸送する基質の識別機構」「輸送の制御機構」この3点を理解する必要があり、原子分解能での構造決定がそのための強力な手段となります。本研究では、重要なイオン輸送体について、構造面からの理解を目標として研究を行っています。これらの成果は生体内における薬剤の取り込み・排出を理解するための基盤情報ともなります。

(図1) すべての生物に保存されたSec経路:細胞質で合成された膜透過前駆体蛋白質はSec膜蛋白質複合体を経由して,しかるべき場所へ輸送される。
(図1) すべての生物に保存されたSec経路:細胞質で合成された膜透過前駆体蛋白質はSec膜蛋白質複合体を経由して,しかるべき場所へ輸送される。
(図2) 蛋白質の膜透過:SecA ATPaseがATPの加水分解のエネルギーを利用したダイナミックな構造変化により段階的に蛋白質を膜透過させる。
(図2) 蛋白質の膜透過:SecA ATPaseがATPの加水分解のエネルギーを利用したダイナミックな構造変化により段階的に蛋白質を膜透過させる。
(図3) 膜輸送体による基質の取り込みの模式図
(図3) 膜輸送体による基質の取り込みの模式図

主な発表論文・著作

  1. Tanaka, Sugano et al., Cell Rep., 13, 1561-1568, 2015
  2. Kumazaki K., Kishimoto T., Furukawa A. et al., Sci. Rep. 4, 7299, 2014
  3. Kumazaki K., Chiba S. Takemoto M., Furukawa A. et al., Nature, 509, 516-520, 2014
  4. Tanaka Y. et al., Nature, 496, 247-251, 2013
  5. Tsukazaki T. et al., Nature, 474, 235-238, 2011
  6. Tsukazaki T. et al., Nature, 455, 988-911, 2008
  7. Hattori M., Tanaka Y. et al., Nature, 448, 1072-1075, 2007
  8. Vassylyev D.G., Mori H., Vassylyeva M.N.,, Tsukazaki T. et al., J. Mol. Biol, 364, 248-258, 2006