研究室・教員

花発生分子遺伝学 (伊藤研究室)

伊藤教授の顔写真
教授
伊藤 寿朗
助教
山口 暢俊、 白川 一、 和田 七夕子
Email
{ itot, nobuy, shirakawa }@bs.naist.jp、yu-wada@gtc.naist.jp
研究室HP
http://bsw3.naist.jp/ito/

研究・教育の概要

奈良先端大を日本の花発生研究の中心地に!
私達は、モデル植物であるシロイヌナズナやイネを用いて花のかたちづくりの研究をしています。花は観賞用として日常に彩りを与えてくれるだけではなく、穀物や果物を作り出す種子植物の生殖器官です。花の発生過程においては、花幹細胞の増殖と分化のバランスがダイナミックに変化するため、発生研究のよいモデル系でもあります(図1)。花の形作りの原理を解明することで、植物分野だけではなく、動物の研究者の方々にも注目してもらえるような研究を世界に発信していくことを目指します。日本の花発生研究の中心地となれるよう、学生さん達を大募集中です。

教育においては、バイオ基礎研究を通して問題に真摯に取り組み、解決していく能力を養います。これによりアカデミックのみならず、企業においても応用力、実行力を発揮することのできる人材の育成を行います。

主な研究テーマ

幹細胞の増殖抑制と細胞分化の制御機構

花幹細胞の増殖は多くの転写因子による複数の遺伝学的な経路により抑制されています。それらの転写因子のターゲット遺伝子を同定し、時空間特異的な発現制御機構とターゲット因子の作用機構の研究を行います(図2)。これにより、花幹細胞の増殖抑制経路における植物ホルモンおよびエピジェネティックな制御機構を解明していきます。

さらに花幹細胞の増殖制御にかかわる細胞間の情報伝達を行うリン酸化を介したシグナルが、最終的にどのように核内に伝達され、エピジェネティックな遺伝子の発現に影響を与えるのかを解析します。可視化解析、数理解析、合成生物学的解析を含めた包括的な解析により、花幹細胞の制御における調和と可塑性、頑強性の機構を分子レベル、細胞レベル、個体レベルで理解することを目指します(図3左)。

環境応答と順化機構

植物は、動物とは異なり、環境変動に対して非常に柔軟に応答し、その環境に適応します。高温条件下で活性の高まるヒストン修飾酵素の作用機構などに着目し、植物が環境に対応して、その情報を記憶してメリステムの挙動、分化の様式を変換する機構および、記憶が消去される機構の解明を目指します。さらにこれらの知見を利用して、農業的な視点からより効率的な農作物の開花、結実時期の調節を可能とする基盤技術の構築も目指します(図3右)。

3) 優劣性をつかさどる制御機構

異なる親同士を交配して得られる雑種第一代は親よりも優れた形質を示すという雑種強勢が見られます。また、アブラナ科植物の自家不和合性に関わる花粉因子には、複雑な優劣性が存在します。遺伝子機能や発現の優劣性を決定するエピジェネティック機構の解明を目差します。

図1
(図1) シロイヌナズナの花発生と花弁の増える変異体。植物はメリステムとよばれる領域に自己複製能および全能性を持つ幹細胞を維持している。花のメリステムは無限成長はせず、花発生の過程で増殖停止する。
図2
(図2) 花幹細胞の遺伝学的解析と幹細胞制御因子のイメージング。花幹細胞は複数の制御因子の多段階の反応により制御されている。
図3
(図3) 花発生研究のアプローチ法(左)と植物生長の最適化(右)の模式図。時空間特異的な動的ネットワークの包括的解析を通して、調和的に機能する発生制御機構、環境変動に応答する花発生経路の可塑性と頑強性の解析を行う。さらに環境応答や順化の知見も合わせ活用することで植物生長を最適化する基盤技術の構築を目指す。

主な発表論文・著作

  1. Yamaguchi, Huang et al., Nature Commun., in press, 2017
  2. Yasuda, Wada, Kakizaki et al., Nature Plants, 3, 16206, 2016
  3. Yamaguchi et al. Plant Physiology, 170, 283-293, 2016
  4. Wu et al. e-Life, 4, e09269, 2015
  5. Guo et al. Plant Cell & Physiology, 56, 830-842, 2015
  6. Sun et al. Science, 343, 1248559, 2014
  7. Gan et al. Nature Commun., 5, 5098, 2014
  8. Xu et al. Nucl. Acids Res., 42, 13749-63, 2014
  9. Yamaguchi et al. Science 344, 638-641, 2014
  10. Shirakawa et al., Plant Cell, 26, 4448-4461, 2014
  11. Shirakawa et al., Plant Cell, 26, 4039-4052, 2014
  12. Xu et al. Current Biol., 23, 345-350, 2013
  13. Yamaguchi et al. Dev. Cell 24, 271-282, 2013