研究室・教員

機能ゲノム医学 (石田研究室)

石田靖雅准教授の顔写真
准教授
石田 靖雅
助教
福田 七穂
Email
{ ishiday, nanahof }@bs.naist.jp
研究室HP
http://bsw3.naist.jp/ishida/

研究・教育の概要

ヒトやマウスなどの生物種でゲノムシークエンスが決定された今、人類に残された大きな課題は、ゲノム機能の解明です。この目的のために私たちは、高等動物(マウスなど)の個体レベルで特定遺伝子の機能を不活性化し、そこに出現する病態を解析することにより、不活性化した遺伝子の生理的な役割を明らかにします。私たちの研究グループは、ヒトやマウスの免疫系と神経系における高次認知機能の秘密を分子レベルで解明することを目指し、日々の研究活動に励みます。

主な研究テーマ

PD-1による免疫学的「自己」の再定義

1992年、石田らによってPD-1が発見されて以来、抗原刺激により活性化されたTリンパ球上に発現されるPD-1が、免疫応答を負に制御する事実が明らかにされて来ました。最近では、PD-1経路の遮断に基づく癌の免疫療法が世界中の病院で実施され、多くの患者さんに朗報がもたらされています(Cell 162, 937, 2015)(図1)。私たちは、ヒトやマウスの免疫系が「自己」と「非自己」を識別する際にPD-1が果たす生理的役割について、様々な角度から研究を進めます。

神経細胞におけるmRNA局在化機構の解明

多くのmRNAは細胞質で翻訳され、その結果生じたタンパク質が必要な場所へと運搬されます。その一方で、特定のmRNAは、必要な場所へ運ばれた後に局所的に翻訳されることが知られています。このようなmRNAの局在化は、胚発生や細胞の非対称分裂など、多様な現象で重要な働きを担っています。匂いの受容を司る嗅神経細胞では、嗅覚受容体をコードするmRNAが軸索末端に局在しています(図2)。私たちは、この嗅覚受容体mRNAの局在化の仕組みや、嗅神経細胞の機能や形成における働きを明らかにするために、RNA結合タンパク質に着目して研究を進めています。

新しい遺伝子トラップ法の開発

従来は、ランダムな遺伝子トラップ法により、マウス未分化ES細胞中で発現しない組織特異的遺伝子を完全に破壊することは不可能でした。しかし、私たちが nonsense-mediated mRNA decay (NMD) の抑制に基づく新しい遺伝子破壊法「UPATrap」を開発し、それが初めて可能になりました(図3)。私たちはこの手法を発展させ、免疫細胞や神経細胞などで特異的に発現する遺伝子をES細胞中で網羅的に破壊することを目指します。興味深い遺伝子を破壊できたES細胞からはノックアウトマウスを作製し、その表現型を解析します。

PD-1 の働きを負に調節することにより、癌細胞に対する細胞性免疫応答を有効に引き出すことができる。
(図1) PD-1 の働きを負に調節することにより、癌細胞に対する細胞性免疫応答を有効に引き出すことができる。
嗅覚受容体は嗅神経細胞の軸索末端にも存在している。この配置は嗅覚受容体mRNAの局在化を介すると考えられるが、その機構や生理的役割は不明である。
(図2) 嗅覚受容体は嗅神経細胞の軸索末端にも存在している。この配置は嗅覚受容体mRNAの局在化を介すると考えられるが、その機構や生理的役割は不明である。
標的細胞中の非発現遺伝子をランダムに、しかも完全に破壊することを可能にしたUPATrap法。
(図3) 標的細胞中の非発現遺伝子をランダムに、しかも完全に破壊することを可能にしたUPATrap法。

主な発表論文・著作

  1. 石田靖雅, 現代化学, 551, 24-27, 2017
  2. 石田靖雅, 肝胆膵, 73, 317-322, 2016
  3. 石田靖雅, 細胞工学, 33, 1038-1041, 2014
  4. Fukuda N. et al., PLoS Genet., 9, e1003858, 2013
  5. Shigeoka, T. et al., Nucleic Acids Res., 40, 6887-6897, 2012
  6. Mayasari, N. I. et al., Nucleic Acids Res., 40, e97, 2012
  7. Shigeoka, T. et al., Nucleic Acids Res., 33, e20, 2005
  8. Matsuda, E. et al., Proc. Natl. Acad. Sci., USA, 101, 4170-4174, 2004
  9. Ishida, Y. and Leder, P. Nucleic Acids Res., 27, e35, 1999
  10. Ishida, Y. et al., EMBO J., 11, 3887-3895, 1992