生物を理解する為にはどの様に行なえば良いのでしょうか?20 世紀後半に生物学の知識は爆発的に増え多くの事が分かりました。しかし、現在でも単細胞生物である細菌の振る舞いひとつ予測する事は困難です。それは、今までの研究が生物を構成する遺伝子やタンパク質などの“部品”の性質について明らかにしてきたからにすぎないからです。私たちは、“部品”がどの様に組み立てられて生物が出来ているのか、つまり部品同士の関係を明らかにする事により生物を理解しようと考えています。
生物を構成する部品の数は膨大ですから、現在の生物学では情報科学の手法が必要不可欠になりつつあります。そこで、私たちの研究室では生物を用いた実験だけでなく生物情報学も理解できる人材を育てています。
1 ) 遺伝的ネットワークの解明
私たちは、大腸菌に存在する約4400 の遺伝子に対して遺伝子破壊を試みました。そして約7 %の生存に必須である遺伝子(破壊できない遺伝子)を除いた、一遺伝子欠失ライブラリーができました。このライブラリーを使って現在二つの方向で、遺伝子の間にある関係性について調べています。
一つの遺伝子欠失を別の欠失と組み合わせることで二重欠失株を作製する方法(double knockout)、もう一つは、特定の酵素を阻害する阻害剤とこのライブラリーと組み合わせる方法(chemical genomics)で、細胞内遺伝子群の機能ネットワーク構造の解明を進めています。私たちは大腸菌全予測遺伝子の4000 の二重欠失の組合せを可能にし、全1600 万組合せでのネットワーク構造解明を進めています。また後者では、DNA 複製の阻害剤を使ったところ、複製の遺伝子以外に多くの翻訳関係の遺伝子が取れてきました。現在、複製と翻訳の間にどんなネットワークがあるかについて研究しています。
2 ) 代謝経路ネットワークの解明
私たちは、炭素源からエネルギーやアミノ酸を合成する中心代謝経路(解糖系、TCA 回路など)に焦点を当てて解析をおこなっています。代謝経路の流れを触媒する酵素の量の変動でモニターする系を確立しました。酵素量の変動はGFP 融合タンパク質の蛍光強度として測定するので、簡便に活きた細胞のままおこなえます。以前測定したRNA 量、代謝物量などのデーターと酵素量のデータをつかって、Cell Illustrator によって中心代謝経路のシミュレーションを行い、より理解を深めることを目指しています。
- Typas A. et al., Nature Methods, 5, 781-787, 2008
- Butland G. et al., Nature Methods, 5, 789-795, 2008
- Ishii N. et al., Science, 316(5824), 593-7, 2007
- Arifuzzaman M. et al., Genome Res., 16, 686-691, 2006
- Baba T. et al., Mol. Syst. Biol., 2006 (2), 0008, 2006
- Hayashi K. et al., Mol. Syst. Biol., 2006 (2), 0007, 2006

