水稲の免疫システムと共生シグナル伝達経路を介した成長促進細菌との共生機構
- 演題
- 水稲の免疫システムと共生シグナル伝達経路を介した成長促進細菌との共生機構
- 講演者
- 井上 加奈子 博士 (バイオサイエンス領域 植物免疫学研究室 博士研究員)
- 使用言語
- 日本語
- 日時
- 2026年9月15日(火曜日) 10:00~10:45
- 場所
- L11
- 内容
植物は、免疫システムを維持しながら有用微生物を受け入れることで、栄 養獲得と環境への適応を可能にしているが、その分子機構については未だ 十分に理解されていない(参考文献1)。多くの陸上植物と共生関係を築く AM菌は、リンが十分な条件や湛水環境では共生が制限されるのに対し、 私たちが水稲から単離した有用細菌は、これらの条件に左右されず成長を 促進する。私は、この有用細菌の共生機構の解明に取り組んできた。興味 深いことに、植物の免疫応答を活性化するOsPep3–OsPEPR1シグナル経路 が、細胞損傷を伴う菌の皮層への侵入・定着を可能にするとともに、共生成 立後の細胞壁修復にも機能し、これらの過程を通じてイネの成長が促進さ れることを見出した。さらに、OsPEPR1は鉄恒常性の維持に機能し、安定し た共生成立に寄与することを明らかにした。また、AM共生に重要な共通共 生経路(CSSP)が、本菌との共生においても活用されることを明らかにした。 本研究から、植物免疫、CSSP、鉄恒常性が連携して有用細菌との共生を成 立させる新たな仕組みが示された。さらに、本菌との共生はイネのリン獲得 を促進し、野外圃場においても接種苗の収量を向上させた。本発表では、 この新規な共生メカニズムの普遍性と、環境条件に左右されにくい本菌の 特性を活かした、汎用性の高い微生物資材への展開について議論したい。
- 問合せ先
- 植物代謝制御
出村 拓 (demura@bs.naist.jp)
奈良先端科学技術大学院大学