セミナー情報

失われた脳機能の回復は、困難ではあるものの、我々科学者が挑戦・解決すべき重要な課題である。脳の一部の領域、例えば海馬では、神経幹細胞が存在し、生涯にわたって新しいニューロンを産生すことで、学習・記憶を維持する。しかし、こうした「自然な」ニューロン新生だけでは、ニューロンの脱落や機能不全が広範囲に及ぶ疾患(虚血障性脳損傷やアルツハイマー病など)において、脳機能の回復はほとんど見込めない。
本セミナーでは、脳機能再生に向けた我々のこれまでの取り組み、1)成体脳海馬の神経幹細胞からの「自然な」ニューロン新生制御、2)ダイレクトリプログラミングによる脳梗塞部位での「人為的な」ニューロン新生の誘導、3)加齢関連疾患克服に向けた若返りリプログラミング誘導、について紹介することで、今後の中枢神経疾患治療に関して議論したい。また、我々の研究はいわゆるウエット研究とドライ研究の両方を推進することで、大きく進展してきた。我々のデータを含めて、シーケンス後のオリジナルファイルは公開することが推奨されており、ヒトとマウスのChIP-seqのデータだけで8万件、 RNA-seqはそれ以上、の公共データが利用可能な状態で存在している。本セミナーでは、こうした公共データの利用法についても触れたい。