NAIST 奈良先端科学技術大学院大学 バイオサイエンス領域

セミナー情報

ウイルス感染における宿主応答機構の解明

演題 ウイルス感染における宿主応答機構の解明
講演者 椎森仁美 博士(医薬基盤・健康・栄養研究所 研究員)
使用言語 日本語
日時 2021年8月23日(月曜日) 15:30~16:15
場所 オンライン開催
内容

生物は外界からのウイルスをはじめとした病原体の感染を防ぎ、生体を守るために、様々な防御機構を持つ。 Clustered Regulatory Interspaced Short Palindromic Repeats(CRISPR) は、 原核生物の獲得免疫系において機能する遺伝子座である。CRISPR免疫系において、外来核酸の切断除去を行うサイレンシング機構に比べ、新規スペーサーの獲得機構については不明な点が多い。今回、超高熱古細菌P. furiosusを用いて、感染源ゲノム及び自身のゲノムからの新規スペーサー獲得が、相同組換領域や高発現遺伝子に多く起こることを明らかにした。さらに、新規スペーサーがどのように認識・プロセシングを受けるのか解析した結果、CRISPR associated proteinであるCas4‐1, Cas4‐2が新規スペーサーのプロセシングを担い、長さや配向性を決定することを明らかにした (1)。
ヒトにおけるウイルスの病原性発現機構や宿主との相互作用、とりわけ、ウイルス感染に伴う宿主の転写制御機構に関しては不明の点が多く残されている。今回、インフルエンザウイルス感染に伴って、クロマチン高次構造が変化し、これがインフルエンザの病態に影響を及ぼすことを明らかにした。ウイルス感染において、ウイルスタンパク質がヒストンメチル化酵素Suv4‐20h2と相互作用することによって同酵素の機能低下を引き起こした結果、特定のゲノム領域においてクロマチンループが形成されることがわかった。その結果、抗ウイルス免疫応答が抑制され、ウイルスの増殖が亢進し、インフルエンザの病態が増悪することを見出した(2)。本セミナーではこれらの分子メカニズムについて紹介する。

【参考論文】
(1) Shiimori et al., Molecular Cell: 814-824 (2018)
(2) Shiimori et al., iScience: 102660-102660 (2021)

問合せ先 植物成長制御
梅田 正明 (mumeda@bs.naist.jp)

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