セミナー情報

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炎症を起こさない抗がんワクチン増強剤の開発

演題 炎症を起こさない抗がんワクチン増強剤の開発
講演者 瀬谷 司教授(北海道大学)
使用言語 日本語
日時 平成30年7月31日(火曜日) 16:00~17:00
場所 大セミナー室
内容

がんは複数の遺伝子変異と免疫回避の併立により増殖した細胞隗である。PD-1抗体が一部の進行がんを寛解しうることはがん患者でも免疫ががん進展を阻止しうる潜在能力を保持することを示唆する。しかし、固形がんでPD-1阻害は30%以下の有効率である。一般にがんの術後化学療法は副作用が強く、患者の高QOLを保証し難い。がん特異的な細胞傷害リンパ球を誘導できればがん細胞だけを選択的に見つけて傷害するという理論で、抗原特異的免疫療法は期待できるとされる。しかし、多くのがん抗原の同定とペプチドワクチン療法が企画されたにも拘わらず、抗がんワクチンや細胞免疫療法の開発は困難を極めている。感染症ワクチンは一般に抗原のみでなく樹状細胞を成熟させるパターン分子(アジュバント、免疫増強剤)を含むために終生免疫を起動できる。感染症の症状はインターフェロンやサイトカインなどパターン分子の副作用によるものである。リンパ球増殖は炎症と独立して無症状に起きうる。がん抗原はパターン分子を含まないために樹状細胞プライムと細胞性免疫を起動できないと考えられる。現在ワクチンのアジュバントはAlumのような炎症性アジュバントしか認可されておらず、これらは樹状細胞依存性の細胞性免疫の活性化より炎症による二次的な免疫活性化を志向したものである。PolyI:Cなどプライム効果のあるアジュバントはサイトカイン血症などの毒性のため、十分量をヒトに使えない。現況を打破するには炎症の副作用なく免疫を活性化するプライムアジュバントを開発することが必要である。がんワクチンのアジュバント開発に向けて、我々は自然免疫の理解からpolyI:Cに代わる合成RNAアジュバントARNAXをケミカルバイオロジーの手法でデザインした。マウスモデルでARNAXはがん免疫を起動しながらサイトカイン血症を起こさずにがん退縮させた。即ち炎症を誘起せず副作用を極小化した。ARNAXはヒトの血液細胞でもマウスの結果を裏付けた。ARNAXと既成のがんワクチン、PD-1抗体療法を組み合わせれば多くの進行がんや転移がんに効果が見込めるはずである。

文献:

Cell Rep. 19, 1874-1887, 2017.    
Cell Rep. 11, 1193-1207, 2015.    
Cell Rep. 11, 192-200, 2015.  
Nat. Commun. 6, 6280, 2015.
Nat. Commun. 4, 1833, 2013.
Cell Host Microbe 8, 496-509, 2010.

問合せ先 機能ゲノム医学
石田 靖雅 (ishiday@bs.naist.jp)

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