セミナー情報

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遺伝暗号によるmRNAの安定性制御機構

演題 遺伝暗号によるmRNAの安定性制御機構
講演者 三嶋 雄一郎 博士(東京大学 分子細胞生物学研究所 RNA機能研究分野)
使用言語 日本語
日時 2017年7月11日(火曜日) 16:00~17:00
場所 L12会議室
内容 mRNAの安定性は遺伝情報の発現量やタイミングを規定する重要な要因であり、様々な機構によって巧妙かつ動的に調節されている。特に近年、microRNA(miRNA)に代表される配列特異的なmRNA分解機構の研究により、mRNA安定性制御は真核多細胞生物の生命機能に必須な制御階層であるとの認識が確立されつつある。一方、mRNAの安定性が単純なシス配列では説明できない例も散見され、mRNAの安定性を規定する未知要因の解明が急務となっている。多くの動物では、卵内に蓄えられた母方ゲノム由来のmRNA(母性mRNA)のうち30-60%程度が、受精後一定時間が経つと急速かつ選択的に分解される。ゼブラフィッシュ胚をモデルとして用いた解析からは、このうち約10%程度がmiRNAの一つであるmiR-430によって分解されることが明らかとなっている(1)。しかしながら、残りの大部分の母性mRNAについてはその分解メカニズムは長らく不明であった。そこで今回、miR-430に依存せずに分解される母性mRNAについて詳細な解析を進めたところ、これらの母性mRNAの一部はポリA鎖の短縮を介して特異的に分解されるものの、その特異性は既知のシス配列では説明がつかないことがわかった。次にレポーターmRNAによる実験と情報解析を組み合わせて検証を進めた結果、これらのmRNAの安定性はORFのコドン組成と強く相関することが明らかとなった。すなわち、分解される母性mRNAのORFはゲノム中で出現頻度が低いコドンが多く含まれており、安定なmRNAでは出現頻度が高いコドンが多い組成となっていた。さらに同義コドンを人工的に置換したレポーターmRNAを用いて検証を進め、コドン組成の偏りが翻訳依存的にポリA鎖の短縮効率に影響を及ぼすことを実験的に証明した。(2)。これらの結果は、コドンには「アミノ酸配列を指定する」という古典的な遺伝暗号としての役割に加え、「mRNAの安定性を決める」という隠された役割があることを意味している。セミナーではこの新規mRNA分解機構のメカニズムと意義について、予備的な実験結果も含めて議論したい。
問合せ先 遺伝子発現制御研究室
松井 貴輝 (matsui@bs.naist.jp)

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