NAIST 奈良先端科学技術大学院大学 バイオサイエンス領域

セミナー情報

ヒメツリガネゴケの茎葉体幹細胞形成とオーキシン極性輸送の分子機構

演題 ヒメツリガネゴケの茎葉体幹細胞形成とオーキシン極性輸送の分子機構
講演者 青山 剛士 博士(Department of Plant Sciences, University of Cambridge)
使用言語 日本語
日時 2014年1月6日(月曜日) 15:30~16:30
場所 大セミナー室
内容
 陸上植物は単複世代交代型の生活環を営んでおり、配偶体・胞子体世代両方に多細胞体を持つ。被子植物は胞子体世代にのみ幹細胞を形成するが、コケ植物やシダ植物は両方の世代に幹細胞を形成する。一方、陸上植物に最も近縁な車軸藻類では、配偶体世代にのみ幹細胞が形成される。この様な現生植物の世代交代様式から、胞子体世代の幹細胞形成機構は、既に存在していた配偶体世代の制御機構を流用して生まれたのでは無いかという説が唱えられてきたが、未だ実験的証拠は得られていない。我々は、幹細胞制御機構の進化を明らかにするために、コケ植物ヒメツリガネゴケをモデル植物としてこの問題に取り組んで来た。
 我々は、AP2型転写因子APB1~APB4が ヒメツリガネゴケにおいて幹細胞制御に関与している事を特定し、その機能解析に取り組んで来た。ヒメツリガネゴケでは、原糸体に形成された側枝始原細胞が原糸体幹細胞と茎葉体幹細胞のどちらかへと分化する。野生型では植物ホルモンであるサイトカイニンの投与によって茎葉体幹細胞が高頻度に誘導されるが、APB四重遺伝子破壊株においては、そのような条件でも茎葉体幹細胞が形成されなかった。また、APB1-Citrine融合タンパク発現株を作成し観察したところ、側枝始原細胞形成時に存在するシグナルが原糸体幹細胞へと分化していく際は消失し、茎葉体幹細胞へと分化していく時は維持される、という事が明らかになった。本発表では、これらの結果を軸に、APB遺伝子が側枝始原細胞からの原糸体・茎葉体幹細胞形成時に幹細胞運命決定スイッチとして機能している可能性について議論したい。
 また、 現在解析中のオーキシン排出輸送体PIN遺伝子の機能についても簡単に紹介したい。PIN遺伝子は被子植物においてオーキシン極性輸送の中心的な役割を担っている。これまでヒメツリガネゴケにおいては茎葉体におけるオーキシン極性輸送が確認されておらず、PIN遺伝子も機能していないのでは無いかと考えられてきた。しかしながら、PIN遺 伝子破壊株を作成したところ、茎葉体及び胞子体において発生異常が観察された。現在解析中のPINの 細胞内局在の結果を加え、ヒメツリガネゴケにおけるPIN遺伝子の機能についても議論したい。
問合せ先 ヒューマノフィリック科学技術創出研究推進事業
久保 稔 (ku-bo@bs.naist.jp)

セミナー情報一覧へ