セミナー情報

セミナー情報

弾性線維は再生できるのか
~線維形成の分子機構~

演題 弾性線維は再生できるのか
~線維形成の分子機構~
講演者 中邨 智之 教授(関西医科大学 薬理学講座)
使用言語 日本語
日時 平成25年11月1日(金曜日) 16:00~17:00
場所 大セミナー室
内容
組織の伸縮性(=弾性)を担っているのは弾性線維という細胞外マトリックスである。これは皮膚に限ったことではなく、肺や動脈などよく伸び縮みする組織においてはいずれも弾性線維が豊富にあり、引き延ばしても元に戻るという特性を組織に与えている。このことは引っ張りに対する強度はあるが伸び縮みしないコラーゲン線維と対照的である。
 加齢に伴って弾性線維は劣化・断裂し、皮膚のたるみ、肺気腫、動脈中膜の硬化などさまざまな老化現象・老化関連疾患の直接原因となる。また紫外線・喫煙によって動員される炎症細胞から弾性線維分解酵素が分泌されることも知られている。しかし弾性線維のターンオーバーは極めて遅くその再生は困難とされてきた。一方、solar elastosisといった老化皮膚に生じる病態においては弾性線維として機能しない異常なエラスチンの沈着がみられる。すなわち、弾性線維はその主成分であるエラスチンタンパク質があればよいのではなく、正しい手順で線維を構築しなければならない。
 弾性線維はミクロフィブリルという線維上にエラスチンタンパク質が沈着し、リシルオキシダーゼによって互いに架橋されることでできる。我々は、このプロセスにFibulin-5という分泌タンパク質が必須であることを発見した。Fibulin-5遺伝子欠損マウスは、全身の弾性線維形成不全のため皮膚のたるみ・肺気腫・動脈の硬化といったヒトの老化によく似た表現型を示した。また、Fibulin-4という分泌タンパク質がリシルオキシダーゼをエラスチンにリクルートする役割を持っていることがわかった。さらに最近、LTBP-4という分泌タンパク質がFibulin-5と直接結合して必須の役割を果たしていることを見出し、弾性線維の構築がどのような手順でおこるのかが明らかとなりつつある。
 興味深いことに、LTBP-4とFibulin-5タンパク質は、細胞培養に加えると弾性線維形成を強く促進する作用があることがわかった。これらは「弾性線維再生タンパク質」とも呼べるものであり、弾性線維再生の医療応用に道を開く可能性がある。

参考文献
 1. Noda K, Dabovic B, Takagi K, Inoue T, Horiguchi M, Hirai M, Fujikawa Y, Akama TO, Kusumoto K, Zilberberg L, Sakai LY, Koki K, Naitoh M, von Melchner H, Suzuki S, Rifkin DB, Nakamura T: Latent TGFβ binding protein 4 promotes elastic fiber assembly by interacting with fibulin-5. Proc Natl Acad Sci USA 110:2852-7, 2013.

  2. Horiguchi M, Inoue T, Ohbayashi T, Hirai M, Noda K, Marmorstein LY, Yabe D, Takagi K, Akama TO, Kita T, Kimura T, Nakamura T:Fibulin-4 conducts proper elastogenesis via interaction with cross-linking enzyme lysyl oxidase. Proc Natl Acad Sci USA 106:19029-34, 2009.

  3. Hirai M, Ohbayashi T, Horiguchi M, Okawa K, Hagiwara A, Kita T, Chien KR, Nakamura T: Fibulin-5/DANCE has an elastogenic organizer activity that is abrogated by proteolytic cleavage in vivo. J Cell Biol 176:1061-1071, 2007.

  4. Nakamura T, Lozano PR, Ikeda Y, Iwanaga Y, Hinek A, Minamisawa S, Cheng C, Kobuke K, Dalton N, Takada Y, Tashiro K, Ross Jr. J, Honjo T, Chien KR: Fibulin-5/DANCE is essential for elastogenesis in vivo. Nature 415: 171-175, 2002.


問合せ先 動物遺伝子機能
岡千緒 (coka@bs.naist.jp)

一覧へ戻る