生殖細胞形成は次世代を残すために必要なプロセスである。そこでは、減数分裂、形態変化およびゲノム構造の変換がおこり、その過程で遺伝子発現が大きく変化する。私達はマウスの生殖細胞から、内在性siRNAとpiRNAとよばれるsmall RNAを見つけ、その機能および経路の解析に取り組んでいる。本セミナーでは、遺伝子発現調節を中心にsmall RNAが生殖細胞形成においてどのような働きをしているのかを紹介する。small RNAの経路は、レトロトランスポゾンや偽遺伝子といったゲノム上のjunk配列が巧みに利用し遺伝子発現を制御している。また、興味深いことに、piRNAはRNAレベルの制御のみならずDNAメチル化などクロマチンの修飾にも関わっている。その詳細な分子機構は不明だが、今後明らかにしていく予定である。
参考文献
Watanabe et al., 2011, Science, 332, 848‐852.
Watanabe et al., 2011, Dev. Cell, 20, 364‐375.
Watanabe et al., 2008, Nature, 453, 539‐543.
Watanabe et al., 2006, Genes Dev., 20, 1732‐1743.