神経システム生物学研究室

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シナプスの形成と可塑性の仕組み

概要

ヒトの脳内では、膨大な数の神経細胞が神経ネットワークを形成し、生きるために必要な知覚、運動、記憶・学習などの脳の高次機能活動を支えています。神経細胞は、情報(神経伝達物質)を出力する軸索とこれを受け取る樹状突起の間に形成されるシナプスを介して神経細胞間の情報伝達を行います。
例えば、脳内で記憶を司る海馬では、樹状突起上に1万個近く存在するスパインと呼ばれる小さなトゲ状構造体が他の神経細胞の軸索とシナプスを形成します。樹状突起スパインは、神経活動により軸索から放出される神経伝達物質に応答して大きさが変化しますが、その大きさの拡大は、シナプスにおける情報伝達を強化すると考えられています。このシナプスの強化は、ヒトの記憶や学習に必要な脳内の神経ネットワークの変化に重要な役割を果たし、神経回路を模したニューラルネットワークに基づく人工知能(AI)の学習でも用いられています。また、神経活動に応答したスパイン調節機構の異常は、認知症や自閉症、知的障害などの神経疾患の発症と関連することが示唆されて来ました。
私たちの研究グループは、シナプスの形成と可塑性の仕組みを樹状突起スパインのシグナル伝達と働きの視点から解析しています。

関連業績

  1. Kastian RF, Minegishi T, Inagaki N, (2021)
    Simultaneous analyses of clutch coupling and actin polymerization in dendritic spines during chemical LTP, Star Protoc. 2, 100904.(LINK)
  2. Kastian RF, Minegishi T, Baba K, Saneyoshi T, Katsuno-Kambe H, Saranpal S, Hayashi Y and Inagaki N, (2021)
    Shootin1a-mediated actin-adhesion coupling generates force to trigger structural plasticity of dendritic spines, Cell Rep. 35, 109130. (LINK)
    報道:EurekAlert!ScienceDailyCALIFORNIA News TimesMedical Xpress
  3. Inagaki, N., Nishizawa, M., Arimura, N., Yamamoto, H., Takeuchi, Y., Miyamoto, E., Kaibuchi, K. and Inagaki, M. (2000)
    Activation of Ca2+/calmodulin-dependent Protein Kinase II within Post-synaptic Dendritic Spines of Cultured Hippocampal Neurons. J. Biol. Chem. 275, 27165-27171. (LINK)

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