神経システム生物学研究室

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新たな細胞内分子輸送機構:アクチン波

概要

「アクチン波」は、アクチン線維がアクチン関連分子とともに細胞内を移動する現象で、 1998年にRuthelとBankerによってその存在が初めて報告されて以来、神経細胞や好中球、粘菌、線維芽細胞を含むさまざまな細胞で観測されています(Inagaki and Katsuno, 2017)。最近、私たちは、神経軸索内のアクチン波が細胞膜に繋ぎ留められたアクチン線維の重合と脱重合によって移動する新しいタイプの細胞内分子輸送機構であることを報告しました(Katsuno et al, 2017)。また、アクチン波による軸索輸送が軸索伸長に必要なアクチンおよびアクチン関連分子を軸索の先端に供給することも明らかにしました(Katsuno et al, 2017)。 移動する細胞の先端では、アクチンや関連分子が濃縮して細胞を牽引することが知られています。そこで、「アクチン線維がどの様にして移動細胞の先導端に集まって細胞移動を引き起こすことができるのか」という基本的な問いが生じます。私たちは、細胞内のアクチン波の動きを解析することで、この重要な問いに答え、細胞の極性形成や移動が始まる仕組みを明らかにしたいと考えています。

神経軸索上を移動するアクチン波(赤)

軸索上を移動するアクチン波の1分子計測像

軸索上のアクチン波の移動の分子メカニズム

関連業績

  1. Inagaki, N., Katsuno, H. (2017)
    Actin Waves: Origin of Cell Polarization and Migration?, Trends in Cell Biology 27, 515-526 (LINK)
  2. Katsuno, H., Toriyama, M., Hosokawa, Y., Mizuno, K., Ikeda, K., Sakumura, Y, and Inagaki, N. (2015)
    Actin migration driven by directional assembly and disassembly of membrane anchored actin filaments, Cell Reports 12, 648-660.(LINK)(解説)(Issue Highlights)
  3. Toriyama, M., Sakumura, Y., Shimada, T., Ishii, S. and Inagaki, N.(2010)
    A diffusion-based neurite length sensing mechanism involved in neuronal symmetry-breaking, Mol.Syst.Biol. 6, 394.(LINK) (解説)
  4. Toriyama, M., Shimada, T., Kim, K-B., Mitsuba, M., Nomura, E., Katsuta, K., Sakumura, Y., Roepstorff, P., and Inagaki, N. (2006)
    Shootin1: a protein involved in the organization of an asymmetric signal for neuronal polarization.J. Cell Biol. 175, 147-157.(LINK) (解説)
  5. 稲垣直之(2019)
    Shootin1による細胞-基質間の力の発生を介した神経細胞の細胞移動,極性形成,軸索ガイダンスおよびアクチン波,生化学,91, 159-168

参考文献

  1. Ruthel, G. and Banker, G. (1998)Actin-dependent anterograde movement of growth-cone-like structures along growing hippocampal axons: a novel form of axonal transport? Cell Motil. Cytoskeleton 40, 160?173.

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