微生物インタラクション研究室の舟窪絵衣美さん(M2)が日本醸造学会若手の会でべストポスター賞(醸造ベーシックサイエンス賞)を受賞
微生物インタラクション研究室の舟窪絵衣美さん(M2)が日本醸造学会若手の会でべストポスター賞(醸造ベーシックサイエンス賞)を受賞しました(2025年10月9日)。
受賞のコメント
このたびの受賞、大変光栄に存じます。ご指導いただいた渡辺大輔先生、赤坂直紀先生をはじめ、共同研究先の清水慎一郎様(清水清三郎商店株式会社)、今井翔也様(株式会社Linné)、石渡英和様(いくひ合同会社)に心より感謝申し上げます。今後も研究のさらなる発展と新たな知見の創出に努めてまいります。

受賞研究課題名
並行複発酵環境において高発酵力を発揮する清酒酵母
受賞内容
日本酒醸造では、デンプンの糖化とアルコール発酵が同時に進行する並行複発酵が採用されています。この発酵形式は、酵母が高糖濃度によるストレスを回避し、高アルコールの日本酒を製造する上で必須とされています。しかしこれまで並行複発酵環境が酵母に及ぼす影響を厳密に調べた研究はありませんでした。本研究では並行複発酵と単行複発酵を再現した実験系を構築し、酵母の発酵力や遺伝子発現の違いを比較解析しました。27%可溶性デンプンを含む培地に糖化酵素と酵母(実験室酵母X2180 株または清酒酵母 K701株)を加え、並行複発酵モデルを構築しました。単行複発酵モデルでは、酵母添加前に糖化処理と酵素失活を行いました。その結果、両株ともに単行複発酵条件と比較して並行複発酵条件の方が高い発酵速度を示し、特にK701 株を用いた場合に顕著な差が認められる点に着目しました。日本酒醸造を模した実験系でも両発酵形式を再現しましたが、同様の傾向が観察されました。したがって、単行複発酵により各酵母にもたらされるストレスは同等ではなく、清酒酵母とは並行複発酵環境での発酵に最適化された酵母であることが示されました。モデル実験系での RNA-seq 解析の結果からは、K701 株において、細胞の最外殻を覆うマンノプロテインをコードする遺伝子群の発現が上昇し、発酵速度の向上との関連が推察されました。これらの結果から、並行複発酵環境を認識する清酒酵母特異的なメカニズムの存在が示唆されました。
関連資料
【微生物インタラクション研究室】
研究室紹介ページ:https://bsw3.naist.jp/courses/courses313.html
研究室ホームページ:https://bsw3.naist.jp/microbial_interaction/
(2025年10月16日掲載)