NAIST 奈良先端科学技術大学院大学 バイオサイエンス領域

研究成果の紹介

バイオサイエンス研究科ストレス微生物科学研究室の 氏本 貴仁 さん(博士前期課程2年)が「日本農芸化学会関西支部例会(第497回講演会)」において若手優秀発表賞を受賞しました。

バイオサイエンス研究科ストレス微生物科学研究室の氏本貴仁さん(博士前期課程2年)が「日本農芸化学会関西支部例会(第497回講演会)」において若手優秀発表賞を受賞しました。 

受賞のコメント

この度は、「日本農芸化学会関西支部例会(第497回講演会)」において「若手優秀発表賞」を受賞することができたことを大変光栄に思います。この賞を頂くことができたのも、高木博史教授をはじめとした先生方や、研究室の皆さまのご指導のおかげであると考えております。この受賞を励みに、今後さらに研究を発展させて、社会に貢献できるよう努めていきます。

 受賞内容 

大腸菌における転写因子CRPを介した硫化水素生成経路の解析 

   システインは医薬・化粧品といった様々な用途で利用されている含硫アミノ酸です。システインは近年、毛髪・羽毛からの抽出法だけでなく、大腸菌を代表とする微生物の機能を活用した発酵法により、グルコースと無機硫黄源から生産されています。しかし、システインの発酵生産においては、大量の硫化水素ガスが発生するため、その発生を抑える技術開発が望まれています。現在、硫化水素は脱硫プロセスによって処理されていますが、生産コストの上昇に繋がってしまいます。そこで本研究では、大腸菌がシステインの発酵生産時に硫化水素を生成する機構を解析するとともに、硫化水素非生産菌の創製を目指しています。
   まず、硫化水素の検出系を用いて、大腸菌の遺伝子破壊株をスクリーニングした結果、crp遺伝子がコードするcAMP receptor protein(CRP)が硫化水素生成経路に関与することが示唆されました。次に、硫化水素の生成経路が有機性硫黄化合物の分解以外にも存在するのか検証したところ、大腸菌において硫化水素はチオ硫酸同化経路からも生成されていることを明らかにしました。また興味深いことに、硫化水素はエネルギー源となるグルコースが完全に消費された後に、急速に生成されることも確認できました。
   以上の結果から、グルコース枯渇によって誘導されたCRPがチオ硫酸同化経路に関与する遺伝子の発現を亢進し、硫化水素が生成されたのではないかと推察しています。今後は、チオ硫酸同化経路に関わるチオ硫酸転移酵素(ローダネーゼ)とCRPとの関係を解析していくとともに、システインを含む有用ペプチドであるグルタチオンの発酵生産への応用にも着手していきます。 

【日本農芸化学会関西支部例会(第497回講演会)】

http://kansai.jsbba.or.jp/presentation/presentation2016/branchmeeting497.html

関連する資料

1. K. Hayashi, N. Morooka, Y. Yamamoto, K. Fujita, K. Isono, S. Choi, E. Ohtsubo, T. Baba, B. L. Wanner, H. Mori, T. Horiuchi: Highly accurate genome sequences of Escherichia coli K-12 strains MG1655 and W3110. Molecular Systems Biology, doi:10.1038/msb4100049, 2006.

2. N. Awano, M. Wada, H. Mori, S. Nakamori, H. Takagi: Identification and functional analysis of Escherichia coli cysteine desulfhydrases. Applied and Environmental Microbiology, 71, 4149-4152, 2005. 

研究室紹介ページ: http://bsw3.naist.jp/courses/courses305.html
研究室ホームページ:http://bsw3.naist.jp/takagi/

(2016年12月14日掲載)

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