研究成果

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バイオサイエンス研究科ストレス微生物科学研究室の高木博史教授が公益社団法人日本生物工学会の2016年度「生物工学論文賞」を受賞

バイオサイエンス研究科ストレス微生物科学研究室の高木博史教授が公益社団法人日本生物工学会の2016年度「生物工学論文賞」を受賞しました(平成28年9月28日)。本賞は、前年に発行された日本生物工学会の学会誌(生物工学会誌及びJournal of Bioscience and Bioengineering)に発表された論文の中から、生物工学の進歩に寄与した論文に対し、授与されます。 

【受賞コメント】 

科学者にとって、地道な研究の成果が実用化されることは大きな喜びです。今回、当方の個人的な思いである沖縄への貢献が「泡盛酵母の開発と商品化」という形で実現しました。このような研究シーズと産業ニーズのマッチング(実用化)には、(1)研究者自身の意欲・熱意、(2)共感者・理解者との信頼関係、(3)努力・幸運・感謝、(4)学会・論文発表などが必須であると感じています。夢の実現に導いていただいた研究室スタッフ(渡辺大輔助教、那須野亮助教、橋田恵介研究技術員)、共同研究先の皆様(バイオジェット、奈良県産業振興総合センター、新里酒造、琉球大学)に厚く御礼申し上げます。特に、優れた親株(101株)の開発者である故新里修一氏(新里酒造前社長)に対し、心からの感謝と哀悼の意を表します。 

http://www.sbj.or.jp/awards/awards_paper_award.html

【受賞した論文の内容】 

「ロイシンの蓄積に伴いイソアミルアルコールを過剰生産する泡盛酵母の変異株の分離と特性解析」
沖縄の伝統的蒸留酒「泡盛」は香りと味に特徴があり、それらの生成には酵母が関与するが、泡盛酵母の育種は全く行われていなかった。清酒やパンの主要な香気成分として知られる酢酸イソアミル(i-AmOAc)とその前駆体のイソアミルアルコール(i-AmOH)は、ロイシン(Leu)の生合成に依存して生成される。酵母のLeu生合成は、LEU4遺伝子がコードするα-イソプロピルリンゴ酸合成酵素(IPMS)の活性がLeuによるフィードバック阻害を受けることで制御されている。
   本研究では、親株(101株)に突然変異処理を施し、Leuの毒性アナログである5,5,5-トリフルオロロイシン(TFL)に耐性を示す変異株の中から、親株に比べて細胞内のLeu濃度が高く,泡盛中のi-AmOH、i-AmOAc含量が増加した菌株を取得し、その特性を詳細に解析した。その結果、IPMS内に同定したアミノ酸置換が、TFL耐性、Leu蓄積、フィードバック阻害解除を引き起こすことを明らかにした。また、アミノ酸置換に伴う立体障害がフィードバック阻害解除の原因であると結論づけた。本研究は泡盛酵母の育種に関する初めての論文であるとともに、アミノ酸アナログ耐性変異株の取得が泡盛酵母の有効な育種法であり、かつ泡盛の高付加価値化(香味性の向上)に有用であることを実証した。また、官能評価ではフルーティーかつやや濃厚な風味との評価が得られた。
    以上の結果から、本変異株は親株よりも香り高い泡盛の醸造が可能であり、「101H(ハイパー)酵母」と名づけられた。101H酵母で製造した泡盛はブランデー様の甘さと果実様の華やかさが好評を博し、昨年5月に合名会社新里酒造より新商品「HYPER YEAST 101」として販売を始めた。
http://www.shinzato-shuzo.co.jp/101/index.html

【関連する論文】 

Hiroshi Takagi, Keisuke Hashida, Daisuke Watanabe, Ryo Nasuno, Masataka Ohashi, Tomoya Iha, Maiko Nezuo and Masatoshi Tsukahara: Isolation and characterization of awamori yeast mutants with L-leucine accumulation that overproduce isoamyl alcohol. Journal ofBioscience and Bioengineering, 119, 140-147 (2015). 

中央が高木博史教授、向かって右側が渡辺大輔助教、左側が大橋正孝氏(奈良県産業振興総合センター) 

【ストレス微生物科学研究室】 

研究室紹介ページ:http://bsw3.naist.jp/courses/courses305.html
研究室ホームページ:http://bsw3.naist.jp/takagi/

(2016年10月12日掲載)

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