卒業生の声 R4年度

海老原 諒子


R4年度修士修了/就職


自分の研究について


アブラナ科種子の胚乳発達の仕組みを研究していました。胚乳発達の仕組みには、遺伝子が父母いずれかのアレルから発現するゲノムインプリンティングが知られており、この機構には、抑制的に働く母方インプリント遺伝子(MEG)と、促進的に働く父方インプリント遺伝子(PEG)が関与します。MEGとPEGは拮抗的に作用すると予想されてきましたが、遺伝子間のネットワークに関して詳細は明らかになっていませんでした。私は、当研究室で同定されたPEGについて、MEGや他のPEGとの関係について調べ、新たな制御ネットワークの存在を見出しました。2年間の研究により特許出願も果たすことができ、この成果は食糧や油脂の収量増加に向けた品種改良の技術へと応用されることが期待できます。

先端大での思い出


実験の空き時間に折り紙やお菓子交換をした思い出もとても印象深いですが、やはり一番心に残っているのは、研究に向き合い、唸った日々です。私は、自分のテーマの基本的な背景や本質を捉えることに時間がかかり、一時期は実験も躓き停滞した状況が続いていました。毎日「なんで?」の連続で、2年間で先生のお部屋に何度お邪魔したか分かりません。それにも関わらず、パソコンで論文やデータを見せる、自ら図を書く等して、先生はいつでも懇切丁寧に説明してくださいました。奥深いテーマに楽しんで取り組み、新しい発見ができたことはかけがえのない財産であり、こうした経験をさせてもらえたのも、私を見捨てず最後まで指導し続けてくださった先生方のお陰です。

後輩へのメッセージ


失敗できること、人から叱られることを有り難いと感じ、色んな経験をしてほしいと思っています。大学院の2年間には、研究や学会、就活など、人生や進路に関わる(?)大イベントが目白押しです。研究だけをとっても、私は失敗を人の五倍経験し、周囲からの注意は人の十倍受けてきた自信があります(自慢するつもりはないです)。ですが、色んなことにチャレンジし、試行錯誤を繰り返したことで、早く立ち直るための方法や考え方を見つけることが上手くなったと感じています。失敗した当時は辛くても、今となっては全て有り難い経験です。また、このラボは自由にさせてもらえることが多く、ラボの人々も周囲をよく見て人のために動いておられる方ばかりです。私が最後まで走り抜けられたのは、ラボの人達のサポートのお陰に他なりません。感謝の気持ちで一杯です。若くて活力溢れる後輩の皆様にも、たくさんチャレンジし、たくさんのことを吸収してほしいです。そして、皆様の活躍の場として、伊藤研を選んでいただけることを願っています。

森下 史


R4年度修士修了/就職


自分の研究について


私は、SUPとPRC2複合体の共通標的遺伝子による花発生機構の解明を行いました。SUPは雄しべの数と心皮の形成を制御する働きがあるため、sup変異体では雄しべの数が増加し、心皮の形成が異常になります。先行研究より、SUPはポリコーム抑制複合体PRC2とタンパク質間相互作用し、H3K27にトリメチル基を付加することでオーキシン生合成遺伝子YUC1/YUC4の転写を抑制します。しかし、SUPERMANがYUC1/YUC4以外にどのような遺伝子の発現を抑制することで雄しべや心皮の性質を決定するかは、分かっていませんでした。そこで私は、SUPとPRC2の構成因子であるFIE、EMF2及びH3K27me3のChIP-seqを行い、共通の標的遺伝子を同定することで、SUP-PRC2による花発生機構の解明を行いました。

先端大での思い出


研究や日常生活ともに、とても充実した二年間を過ごしました。大学の時とは研究分野が異なるため、やっていけるのか不安がありましたが、先生方のおかげで研究の知識が増え、最終的には良い結果を残すことが出来ました。また日常生活に関しても、毎日同期とお昼ご飯を食べたり、後輩や先輩とピザを食べながらWBCを観たりと、とても楽しい思い出を作ることが出来ました。充実した二年間を過ごすことができ、伊藤研に入って良かったと、心から思います。

後輩へのメッセージ


この二年間は研究や就職活動など、やることがたくさんあり、本当にあっという間でした。研究や就職活動で上手くいかないことが多々あると思いますが、「なんでも最後にはうまくいく」(伊藤先生のモットーで、私の好きな言葉です)という想いがあれば、結果はついてくると思います。焦らず、たまには一息つきながら、充実した二年間を過ごして下さい。

古田 優


R4年度修士修了/進学


自分の研究について


花弁は送粉者を誘導し受粉を成功させたり、雄しべや雌しべの生殖器官を保護するなど、次世代を残すために重要な器官です。しかし、その花弁を維持し続けるためには大きなエネルギーが必要であり、植物は受粉後、花弁の脱離を積極的に行っていると考えられます。私はこの植物のしなやかな生存戦略に興味を持ち、この研究を選び進めてきました。

先端大での思い出


ラボのメンバーとの何気ない会話や雑談がとても楽しかったな思います。また、伊藤研にはとても優しい先輩、元気いっぱいで活発な後輩、親身にいろんなことを相談できるラボのおかん的存在の技官さん、そして、学生のことをよく考えて優しく的確な指導をしてくれる先生方がいて、とても居心地の良い中で研究を行うことができました。ラボに行きたくない日なんてほとんど無かったくらいです。とても恵まれているいい環境だなと感じます。

後輩へのメッセージ


奈良先端大や伊藤研は研究をなに不自由なく行うことが出来るとても素晴らしい環境です!修士課程の2年間で思う存分その環境を使い果たして下さい。また、少しでもこの素晴らしい環境が2年で終わるのはもったいないな、まだまだ残って研究したいなと思った場合は進学も是非検討してください!

福地 正弥


R4年度修士修了/就職


自分の研究について


植物の開花時期を制御する化合物の探索とその機構の解明です。植物は花を咲かせるまでは葉を作り続けて成長します。しかし、花を咲かせると葉の成長が停止するため、それ以上大きくなれません。そのため植物の開花時期を遅らせる必要があります。そこで私は、植物を十分に成長させるために植物の開花時期を遅らせる化合物を探索し、その機構の解明を行いました。人体や環境に無害であり、植物の開花時期を遅らせる化合物を見つけることができれば、今後の食料増産や農業の簡便化に繋がることが期待されます。

先端大での思い出


生物分野の研究が初めての私は入学当初はほとんど何もわからない状態でした。しかし、伊藤研では先生方や技官さん、先輩方のサポートが手厚く、親切に指導してくださり、2年間恵まれた環境で研究活動に取り組むことができました。

また、コアタイム後は同期と雑談したり、ご飯に行くなどメリハリのある研究生活を過ごせたと思います。

後輩へのメッセージ


2年間の学生生活ではやることが多く、研究や就職活動など辛いことがたくさんあると思います。そんな時は一人で抱え込まずに周りの人達に相談するといいと思います。伊藤研では多くの人たちが力になってくれます。2年間充実した大学院生活を送ってください!

谷田 舞


R4年度修士修了/就職


自分の研究について


私は、ほぼすべての陸上植物が持つ孔辺細胞と、アブラナ科植物が進化の過程で独自に獲得したミロシン細胞の分化制御機構の解明をテーマに研究を行いました。興味深いことに、これら2つの細胞は分布、形態、機能が全く異なるにも関わらず、その分化はマスター転写因子FAMAによって促進されます。しかし、FAMAがどのように2つの細胞の形態やその運命を変えているのかは不明です。これを明らかにすることで、植物が進化の過程でどのように独自の機能を獲得したかの理解に繋がると期待されます。

先端大での思い出


あっという間の2年間でしたが、研究室でのいつもの日常が一番楽しかったです。日々の研究に加え、学会発表、就職活動、修士論文と、常に何かに集中して取り組む中で、たまに行き詰まることもありましたが、同期のみんなと楽しくお昼を食べ、切り替えて実験をする毎日はとても充実していました。そして分からないことがあればいつも先生、技官さん方、先輩方が親切丁寧に教えてくださり、モチベーションを保って楽しく研究に取り組むことができました。本当に感謝しています。こうした普段の日々が私にとってはかけがえのない経験です。これを糧にして卒業後も頑張っていきます。

後輩へのメッセージ


修士の2年間は一瞬で駆け抜けたように感じます。研究活動、就職活動ともに、新しいことに挑戦し、一生懸命取り組んでいればつまずくこともあると思います。実際、小さなことも含めるとたくさんありました。実験がなかなか進まない時期があったり、面接帰りの新幹線で落ち込んだり。そんな時は、伊藤研のメンバーを思い出してください。必ず支えてくれます。そして、定期的にケーキを食べるなど息抜きをしながら無理をせず、だけど自分の納得がいくまでやり切ってください!皆さんの学生生活が楽しく充実したものになることを願っています。