卒業生の声 R1年度

山 口 翔


R1年度修士修了/就職


自分の研究について


私の研究テーマは「胚乳発達機構の解明」です。花はその美しさで人々を魅了し、形成された実や種子は食料となります。被子植物の種子には、個体へと発生する胚とその胚へ栄養を供給する胚乳が含まれます。胚乳には栄養分が蓄えられており、我々にとっても食料源として重要です。例として、三大穀物である米、小麦、トウモロコシの可食部は胚乳であることが挙げられます。このため、胚乳発達機構の解明に向けた研究は、胚乳発達の人為的操作により収量を増加させるなど、食料問題の解決への応用が期待されます。胚乳発達には「ゲノムインプリンティング」という父親と母親からの作用の違いが関与します。父親は自分の子が他の父親の子よりも多くの資源を獲得することが子孫を残す上で有利になります。一方、母親は全ての子供に対して均等に資源を配分することで、より多くの子孫を残すことが有利になります。このため、父親は資源投資量を増やすような遺伝子を、逆に母親は資源投資量を減らすような遺伝子を発達させます。私はこの違いが生み出す胚乳発達機構の解明を目的に研究を行いました

先端大での思い出


研究室でのイベントが多かったことが印象に残っています。夏のBBQ、秋の仮装マラソンなどの大きなイベントや、誕生日会やプリン会など、1年を通して多くのイベントがあり、非常に楽しい2年間でした。イベントを通して学生同士だけでなく、先生方や技術補佐員の方々とも良い関係が築け、とても雰囲気の良い研究室でした。伊藤研には研究の場としてだけでなく、充実した大学院生活を送る上でも素晴らしい環境が整っており、この2年間を伊藤研で過ごせてよかったと心から思っています。

後輩へのメッセージ


研究室選択から始まり、学会発表、就職活動、修論発表とあっという間に2年間が過ぎていました。もちろん苦しいこともたくさんありましたが、研究室のメンバーに支えていただき、無事乗り越えることができました。また、メンバーと旅行したり、飲み会をしたり、楽しいこともたくさんありました。研究も就職活動も大切ですが、ときには遊んだり休んだりすることも忘れず、充実した大学院生活を過ごしてください。

松 本 紘 弥


R1年度修士修了/就職


自分の研究について


私の研究は生体防御を担うミロシン細胞の分化と環境応答性の解明です。ダイコンやワサビの辛み成分がどのように出来るか知っていますか?実は、ミロシン細胞に蓄えられているミロシナーゼが基質と反応することで産生される忌避物質がこの辛み成分の正体なのです。このシステムを使って、ミロシン細胞は植物の中で生体防御の役割を担っています。しかし、どのようにミロシン細胞が作られるのかということは多くのことが分かっていません。そこで、私は転写因子や栄養条件に注目して、ミロシン細胞の分化の仕組みの解明を目指して研究を行いました。

先端大での思い出


皆さん、もしかしたら先端大が不便な場所にあると思ったかもしれません。ですが、その分ここには整った研究設備や仲間、優秀な先生方など、恵まれた研究環境があると思います。たくさんの方々の助けがあったお陰で、充実した大学院生活を送ることができたと思います。

後輩へのメッセージ


就職する場合、大学院に在籍する期間はたったの2年間です。ですが、その中では授業や研究室選択、就職活動、実験、修士論文の執筆など、たくさんの選択とそれに伴う不安があると思います。残念ながら、その選択を正解に変えることができるのは自分だけです。しかし、伊藤研にはそれを支えてくれる頼れる先生方や先輩がいると思います。そして、そうした周りからの刺激がきっとあなたを一回り大きくさせてくれることでしょう。是非、実りある大学院生活を送ってください。

飯 村 秀 明


R1年度修士修了/進学


自分の研究について


被子植物の花の根元には、蜜を分泌する器官である蜜腺があります。この蜜腺を作る遺伝子としてCRABS CLAW (CRC) 遺伝子が知られており、CRC遺伝子が機能しないcrc変異体は、花の幹細胞の増殖停止が遅れる、果実が短くなるという表現型に加え、蜜腺が形成されなくなるという表現型を示します。CRC遺伝子は転写因子をコードしており、下流の遺伝子の発現を制御しています。しかし、蜜腺においてCRCがどのような遺伝子の発現を制御し、蜜腺を発達させるかは解明されていませんでした。
私たちは蜜腺においてCRCが直接結合し、発現を制御する遺伝子を同定しました。同定した遺伝子には、蜜腺の分化や蜜の分泌に関わると報告されている遺伝子がありました。さらに、新たに蜜腺の分化に関わる遺伝子も同定しました。今後は、蜜腺においてCRCの下流遺伝子がどのように機能するかを調べることで、蜜腺発達の仕組みを解明しようと考えています。

先端大での思い出


奈良先は研究環境がとても良いと思います。研究設備が充実しており、必要な実験はすべてスムーズに行うことができました。伊藤研はラボのメンバーが多いため、研究に対して多くのアドバイスをもらえることや、困ったことがあったら相談やお願いをできる人がいることがよかったです。研究以外では、親子科学教室を開催したときや、駅伝大会に参加したときなど、ラボのメンバーと一緒に何かをやったときが楽しかったです。

後輩へのメッセージ


今この環境でしかできないことがあると思うので、悔いのないように過ごすといいと思います。2年間はあっという間なので、やりたいことができるように頑張ってください!

片 岡 修


R1年度修士修了/就職


自分の研究について


アブラナ科植物における低分子RNAを介した自家不和合性花粉側因子SP11の優劣性制御機能について研究を行ないました。まず、アブラナ科にはハクサイ、キャベツ、ダイコンといった、我々の生活には欠かせない植物が分類されています。これらの植物は自家の花粉では受精しない性質―自家不和合性を保持しています。この性質は種内の遺伝的多様性を維持するために必要となります。しかし、「交配機会」や「新しい品種の作出」において障害になります。そのため、自家不和合性を自在に操作する技術の確立が望まれ、古くから研究が続けられてきました。その後、自家不和合性の制御には、花粉側因子S-LOCUS PROTEIN 11(SP11)の存在が明らかにされました。またこの遺伝子にはメンデルの遺伝の法則の優劣性関係が見られること、さらにその優劣性の制御は24塩基長の低分子RNAによって制御されていることが明らかにされました。しかし、この優劣性を制御する条件については不明でした。
私はその制御条件が「配列相同性依存的」であることを実験的に初めて証明することができました。さらに、低分子RNAを構成している「特定の塩基」が重要であるという条件も新たに見つけることができました。

先端大での思い出


印象に残ったことは、NAISTには様々なバックグラウンドを持った人、そしてなにより魅力的な人が多いことです。そしてその人達と大学院生活を過ごすことで、多種多様な「価値観」を学ぶことができたと思います。
楽しかったことは、大学院生活の”全て”です。NAISTでの研究生活は本当に楽しかったです!

後輩へのメッセージ


臆することなく果敢に挑戦し、多くの失敗を経験し、悩んで、挫折して、反省して、前に進んで行ってください。
そしてなにより、大学院生活は長いようで、とても短いです。一瞬で過ぎ去っていきます。一瞬、一瞬を大切に過ごしてほしいです。
伊藤研究室は学会に参加することができますし、成長の環境が揃っています。
是非頑張ってください、応援しています。

森 崎 由 花 帆


R1年度修士修了/就職


自分の研究について


私は、花を咲かせる時期を制御する低分子化合物の探索と、その作用機序の解明を行いました。植物が花を咲かせて得られる種子は果実、葉は野菜など、我々の食料となります。食料を安定生産する上で、花を咲かせる時期を人為的に制御することは重要な課題です。そこで私は、化合物スクリーニングを行い、花を咲かせる時期を制御する低分子化合物を発見しました。さらに、発見した化合物に関して、免疫沈降法によりヒストン状態を調べるなど、分子メカニズムの解明にも迫りました。

先端大での思い出


奈良先は、研究設備が整っており研究に集中できるだけではなく、駅伝大会やスポーツ大会などの楽しいイベントも開催されるため、メリハリのある生活を送ることが出来ました。また、伊藤研の皆さんはとても優しく、研究面だけではなく精神面も支えて下さり、これまでになく充実した生活を送ることが出来ました。

後輩へのメッセージ


大学院の2年間は、本当にあっという間に過ぎてしまいます。なので、研究も就活も修論も、もちろん遊びも全力でやり、後悔の残らないように過ごして欲しいです。行き詰まってしまうことや挫折してしまいそうになること、色々な悩みを抱えてしまうこともあるかもしれません。そういう時は、伊藤研の仲間を頼ってみてください。知識豊富な先生、優しい技官さん、面白い先輩、共に頑張る同期、きっとみんな力になってくれます。一人で抱え込まず、仲間と支え合いながら、充実した2年間を送って下さい(^^)!

吉 水 芳 織


R1年度修士修了/就職


自分の研究について


植物の環境応答の一つである「高温順化」という現象がどのように起きているかについて、調べました。植物は動物と異なり、移動することができないため、生育が環境によって大きく左右されます。特に高温ストレスは、植物の成長や発達に大きく影響します。植物は通常、高温にさらされると環境に適応できず、枯れてしまいます。しかし、植物に一度中程度の高温にさらす順化を行うとその経験はしばらく記憶され、通常時では耐性をもたないような高温に耐性をもつようになります。この現象を「高温順化」といいます。「高温順化」のメカニズムは詳細には明らかになっておらず、私はメカニズムの解析を行いました。

先端大での思い出


奈良先端大は研究設備が充実しており、研究に打ち込みやすい環境であったと思います。取り組みたい実験にも不自由なく取り組め、同じ研究室の方から様々なアドバイスを頂くことができ、とても勉強になりました。充実した2年間でした。

後輩へのメッセージ


大学院の2年間は長いようで一瞬で過ぎてしまいます。短い時間ですが、研究活動、学会、就活、修士論文など大変なことが目白押しです。大変なことが多いからこそ、一人で抱え続けるのではなく、先生方や技官さん、先輩、友人などに相談することが私自身とても大切だと思いました。困った時には是非周りの人に頼ってください。短い期間ではありますが、おそらく最後の学生生活となりますので、様々なことに挑戦して、悔いの残らないように頑張ってください。