小 林 利 紗
H30年度修士修了/進学
自分の研究について
大根や白菜などに代表されるアブラナ科植物は自家不和合性(自株の花粉では受精せず、他の株の花粉でのみ受精に至る性質)を有し、そのおかげで種の遺伝的多様性が維持できますが、一方で、安定した品質と生産性を保つためには自家不和合性は時に障害となります。そのため、生産現場では自家不和合性を自在に操作する技術の開発と、そのメカニズムの解明が望まれています。
私は、B. rapaの花粉側自家不和合性因子SP11における優劣性制御機構の解明を研究目的として実験を行いました。そして、優性側がもつ低分子RNAが、配列相同性依存的に劣性側SP11にDNAメチル化を付加しその発現を抑制する、エピジェネティック制御機構であることを証明しました。
この研究を発展させることで、自家不和合性の人為的な操作が可能となり、将来的には育種技術として応用できると期待されます。また、この低分子RNAは約100年前にR.A.フィッシャーが提唱したものの否定されてきたDominance modifier(優劣性を決定づける因子)に相当するため、さらなる研究を進めることで、優劣性の起源という謎にも迫ることができると考えます。
先端大での思い出
NAISTに入学して一番よかったと思うのは、多くの新しい出会いがあったことです。NAISTでは入学後に研究室を選択できるため、研究室内外を問わずに多くのつながりができました。また、イベントも多く、秋の仮装マラソン大会はとても盛り上がりました。
また、NAISTには十分な研究設備が揃っており、研究をするには素晴らしい環境です。
後輩へのメッセージ
この2年間、研究室選択のためのテストや就職活動、実験、修士論文の執筆など思い返せば高プレッシャー、高ストレスな出来事が多くありましたが、今までの人生の中で一番充実して一番楽しかった2年間でした。もちろん、うまくいかずに投げ出したくなるようなことも多々ありましたが、研究室のメンバーと励ましあい、乗り越えることができました。私はNAISTに入学した際、どの研究室に入るかとても悩んだのですが、今は伊藤研を選んで本当によかったと心から思っています。
布 平 竜 也
H30年度修士修了/就職
自分の研究について
私の研究テーマは雑種強勢という現象の原因遺伝子の探索です。雑種強勢とは異なる系統の親同士を個配して得られるF1雑種が両親よりも旺盛な生育を示す現象のことです。一般的には品種改良などで用いられている現象で、自身の研究が将来的に社会に貢献するイメージがつきやすかったためこのテーマを選択しました。植物を扱った研究をするのは大学院からのスタートでしたが、先生方や先輩方が丁寧に指導してくださり、問題なく研究に取り組むことができました。
先端大での思い出
様々なバックグラウンドの人が集まっていることが印象的でした。いろいろな考えを持った人と話すことで自分の考えの選択肢が増えたと感じています。
後輩へのメッセージ
大学院で最も感じたことはタイムマネジメントの大切さです。先端大では大学院から新たに研究テーマをスタートするため時間が足りないと感じると思います。研究、就職活動、休み、これらのバランスをしっかり考えて行動することが重要になります。しっかりとゴールを見据えて計画をたて、充実した大学院生活を送ってください。
月 川 麻 央
H30年度修士修了/就職
自分の研究について
ミロシン細胞の分化について研究を行っていました。ミロシン細胞は、アブラナ科の植物が有する細胞で生体防御の役割を担っています。細胞内部の液胞にはミロシナーゼという酵素が蓄えられており、虫などの草食生物に食べられて細胞が破壊されるとミロシナーゼが漏出し、基質と反応することで忌避物質が産生されます。この忌避物質はダイコンやワサビの苦み成分として知られています。植物はこのようなシステムで生体防御を行っていますが、ミロシン細胞自体がどのようにしてできるのかということについては、ほとんど何もわかっていません。そこで、私は主にヒストン修飾酵素に着目して、ミロシン細胞の分化に関わる因子の探索を行いました。
先端大での思い出
研究設備が整っており良い環境で研究を進めることができました。研究以外にもたくさんのイベントがあったことが印象的でした。学内全体での駅伝大会やバレーボール大会のほかに、研究室内でのイベントも多く楽しい思い出ができました。
後輩へのメッセージ
授業や研究室選択、就職活動、修士論文の執筆や発表、気付いたらあっという間に二年間が過ぎ去っていました。
自分のやりたいことは何か、しっかり考えて1日1日を過ごしてください。決して一人で抱え込まずに、友達や研究室のメンバーに相談して、助け合って日々を乗り越えてください。伊藤研にはそのようなことができる優しい人ばかりだったので、本当に伊藤研に入れてよかったと思える二年間でした。
澤 田 遥
H30年度修士修了/就職
自分の研究について
花の形作りに関わるKNUCKLESの発現制御についての研究を行いました。抑制的ヒストン修飾によるエピジェネティックな制御や、細胞周期との関連について、実際に植物を用いて研究しました。
先端大での思い出
困ったことはいつでも相談できる環境だったので、楽しく研究にうちこむことができました!
先生方だけでなく、先輩方や技術補佐員の方など相談できる相手が多く、安心して研究できたことが印象に残っています。
後輩へのメッセージ
楽しみながら最先端の研究ができる、最高の環境でした!頼れる先生方や先輩と一緒に研究に邁進してください!
丸 岡 孝 資
H30年度修士修了/進学
自分の研究について
一部のシロイヌナズナは春に花を咲かせます。 このシロイヌナズナで適切な時期に花成がおこるのは、環境温度によって花成抑制因子であるFLOWER ING LOCUS C (FLC)の発現が制御されるためです。このとき、FLCの発現はエピジェネティックな制御によって調節されています。私は環境温度に応じて変動する植物のエピジェネティク制御を明ら かにしたいと考えて研究をおこないました。植物の実験は初めてでしたが、先生や技術補佐員の方に助けていただいたおかげで充実した研究生活を送ることができました。
先端大での思い出
NAISTは外国の学生が多く、 特に博士後期課程においては学生の半数以上が留学生です。 研究をうまく進めるためには彼らと話すことも重要です。 もちろん彼らと意思疎通するのが困難だと感じる場面もありますが、 それは同時に自身の成長のチャンスでもあります。 私はいろいろな国籍の人と働くことに興味のあったので毎日楽しい です。
後輩へのメッセージ
植物の実験は準備をしてから結果が出るまでに長い期間がかかります。また、実験が単発で完結することはありません。 結果に応じて次の実験に進み、また結果を出すというサイクルの積み重ねによりインパクトのある 成果が得られます。したがって、研究を効率的に進めるためには実験を始める前に、想定される結果を具体的に考えておくことが重要です。その想定をもとに十分な計画・準備をしておくことが2年、ないしは5年という短期間で立派な成果をあげることにつながります。伊藤研にはいくつもの大きな成果を出してきた先生が4人も いて、しっかりとしたサポートを受けることができます。頑張りましょう。
宗 田 匡 史
H30年度修士修了/就職
自分の研究について
私はアブラナ科植物のみが持つ独自の防御機構であるミロシン細胞分化のメカニズムを研究しました。ミロシン細胞にはミロシナーゼという酵素が大量に蓄積されており,昆虫などの草食動物によりミロシン細胞が傷つけられるとミロシナーゼが基質であるグルコシノレートを分解し,揮発性の忌避物質を産生します。ミロシン細胞の生理学的な意義はよくわかっているのに対して,その分化・発生を制御する分子メカニズムはほとんどわかっていません。そこで私の研究ではミロシン細胞の分化に働く遺伝子の解析を目的としています。
先端大での思い出
研究室でのイベントが多かったことが印象に残っています。伊藤研では誕生日会や仮装マラソン、BBQなどの研究室メンバーとの仲が深まるイベントが数多くありました。大学院は授業や実験が多いため遊ぶ機会が少ないのですが、これらのイベントのおかげで多くの友人を作ることができました。また学生だけでなく先生方、技術補佐員の方々ともコミュニケーションを楽しみ、充実した生活を送ることができました。
後輩へのメッセージ
大学院は2年間ありますが、就職活動に中間発表、修論発表などやることが多くあっという間に過ぎてしまいます!実験も2年間ではあまり芳しくない結果で終わることもあります。けどそれでいいのです。最後の学生生活なのですから勉強面だけでなく同期・先輩たちとの遊びもしっかり楽しんでください。
阿 部 真 人
H30年度修士修了/就職
自分の研究について
「シロイヌナズナの根におけるヒストン修飾酵素SDG7、SDG8の機能解析」
植物の形態形成には、エピジェネティックな遺伝子発現制御機構の1つであるヒストンのメチル化修飾が重要です。シロイヌナズナのヒストン修飾酵素であるSDG7とSDG8は、標的遺伝子座に遺伝子発現を活性化させるヒストン修飾を付加して、様々な生命現象を制御します。しかし、SDG7とSDG8がどのようにしてDNA上にリクルートされ、下流遺伝子の発現を制御するかは不明でした。私は転写因子ライブラリーを用いたYeast Two Hybridスクリーニングにより、SDG7とSDG8がMYB様転写因子と複合体を形成することを明らかにしました。さらに、RNA-seqとChIP-seqにより、地下部におけるSDG7とSDG8の下流遺伝子を網羅的に同定しました。現在は、SDG7とSDG8は側根形成を促進する遺伝子の発現を直接的に活性化させているのではないかと予想し、調べているところです。
先端大での思い出
奈良先端大での一番の思い出は研究生活です。私は、エピジェネティックな遺伝子発現制御による植物の形態形成や環境応答に興味を魅かれ、伊藤研への配属を希望しました。伊藤研では、やりたい研究に好きなだけ挑戦できる環境が整っていました。先生方の的確な指導のおかげで、納得がいくまで研究に打ち込むことができました。また、とても良いラボメンバーに恵まれたと思っています。修論発表や就職活動で大変なときには支えていただきました。2年間の大学院生活を伊藤研で過ごすことができて幸せでした。
後輩へのメッセージ
みなさまには、研究室のメンバーと仲良く、励まし合いながら大学院生活を送ってもらいたいと思っています。2年間の大学院生活の中では、一人では挫けそうになってしまうこともあるかもしれません。そんなときは、他のメンバーを頼ってみてください。わずかな雑談からでも元気が生まれます。伊藤研の教員や学生、技官さんは、みなさんが優しい人ですから、遠慮して溜め込む必要はありません。そして、他のメンバーのことも支えてあげてください。助け合いながら生きていきましょう。