NAIST 奈良先端科学技術大学院大学 バイオサイエンス領域

研究室・教員

卒業生の声 - 拡がるNAIST遺伝子 -

大石 英一 さん

  • 長野県須坂高等学校 理科教諭
  • 2002年度(修士) 細胞遺伝学
大石 英一さんの近況写真

長野県の高校で教員をしています。奈良先端大を卒業して二年間講師をし、三年目に採用され、現在須坂高校で三年目をむかえました。

私が奈良先端大へ進学したのは、教員・スタッフの方々が日本の分子生物学の第一人者ということ、施設設備がどこよりも充実していたことです。このような環境で学べれば最先端技術に触れながら、研究というものをしっかりした考えで学べるということで受験しました。

研究室は細胞遺伝学講座(小笠原直毅教授)で、枯草菌の機能未知GTP結合タンパク質と細胞分裂の関係を研究しました。ミュータントの作成から、観察、データ処理を行い研究しました。先輩、先生方とよくディスカッションをし、自分の考え方の甘さを毎日感じながらすごしていました。修士論文もかなりの甘さがあり、データをそろえながらなんとかまとめたことを覚えています。このときは非常に苦しかったこともありましたが、今になってみればしておいて良かった経験になっています。研究する姿勢とはどんなもので、どのように突詰めるかを身にしみて実感できたと思います。

高校の教員になりたいとはじめて思ったのは高校の終わりのころです。それまで全く勉強しなかったのですが、勉強するようになって理科が面白くなり、わかる楽しさを教員という立場になって伝えられると考えたのが高校教員をめざしたきっかけです。奈良先端大に入るまでは採用も少ないので無理だとあきらめていましたが、自然科学の面白さや、研究のすばらしさを伝える職業として何が良いのかを考えている中で、やはり教員だと思い、挑戦することにしました。

修了後の二年間は母校の高校で生物と化学を教え、課題研究の指導を行いました。このときの課題研究指導はリモネンという物質に注目し、抗菌作用があるかどうかを調べるものでした。生徒に研究の仮説、実験計画をたてさせ、それを話し合い、論理的に仮説を証明できるようにして実験をするというものでした。大学院時代に経験したことがと大変役に立ちました。また、このとき予備校の講師もしていたので、大腸菌の形質転換のキットを購入し実験講座を行い何人かの生徒が分子生物学に興味を持ち進学していきました。ここでもただの体験で終わることのないよう、実験結果を考察させて考え方を鍛えるということを考えて行いました。

採用されて現在勤務している長野県須坂高等学校では2年間あまり分子生物学的なことはできませんでしたが、この間に研修会やイベントに出向き何か私たちの学校でできることはないかと考えていたところ、JST(独立行政法人 科学技術振興機構)が行っているSPP(サイエンスパートナーシッププロジェクト)を知り、また、研修会でお世話になった地元の信州大学の先生方ともいろいろな話をする中で、SPPを応募してみようということになり、昨年採択されました。SPPは大学等と高等学校が連携して理科教育をするというものです。6月にDNAを抽出する実験、7月には組換えDNA実験(大腸菌の形質転換)、最終回の12月には大学の設備を借りて、アルコールの分解に関わる遺伝子をPCRで調べ、ヒトDNAの扱い方、それを取り巻く問題を考えるというような内容で3回行いました。生徒も自主的に申し込みをしてきて、楽しく実験したり、自分の考えを述べたりでき普段できない経験ができたと思います。

教員の仕事はこれ以外にもたくさんあります。ホームルーム運営や部活動、学校の係、委員会等たくさんあります。現在3学年の担任でクラスの生徒の進路指導のための面談をしたり、大学受験のための教科指導もしなければなりません。また、部活動も山岳部と水泳部の顧問をしており、休日も指導している状況です。平日も学年や係の仕事(会計処理や模擬試験の実施のための準備)をこなしながら、その間に授業をしているという感じになっています。多くのことを同時に進行させなければならないわけですが、これも大学院在籍時に実験を複数行いながら、その間に論文を読むというようなことを経験したことが役に立っていると思います。

奈良先端大は、スタッフ、設備が充実している中でいろいろな力がつけられます。ホームページをご覧の皆さんも是非奈良先端大に入学して、トップを目指し研究生活の中で自分自身を高めていってください。

【2008年10月掲載】

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